ツイッター小説 140字の風景(感動)

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140字の風景(感動系)②

線香花火

パチッ!パチッ!

眼前に拡がる煌めき。

数秒で炎の滴が落下する。

そして次に火を点ける。

夏の風物詩とも言われる。

昔はみんなでやったな。

誰もいなくなった庭で呟く。

楽しかった思い出に浸りながら

目の前の花火を見つめる。

幸せもあっという間。

また次に火を灯す。

約束

ブゥオン!

右手を一捻り爆音が轟く。

左手を緩やかに解放し

陽炎立つ道を滑り出す。

真っ直ぐに進めば

その先は念願のビーチ。

海まで走ろうぜ!

亡き友との約束。

果たせぬまま逝った。

しっかり掴まっとけよ!

一気に加速する。

やっぱ最高だな。

やつの声が聞こえた。

桜子(桜子さん)

いつも真剣に生きてきた。

たくさん失敗もしたな。

病気にもなってしまった。

それでも前だけを

向いて歩いてきた。

明るいと人は言う。

でも陰でたくさん泣いたよ。

強くなんかない。

いつも支えてくれた人達。

だから私も支えたい。

この時が続く限り

伝えることが使命。

父親

20年間父だと

疑ったことはない。

成人の記念に何気なく

戸籍を確認してみた。

父親の欄に見知らぬ

男の名が記されていた。

母に尋ねても

何も答えてくれない。

途方に暮れ、昔遊んだ

公園で1人時間を潰す。

夕闇の中に人影が。

お前は俺の子供だ。

その影が優しく呟いた。

老母

行かなくちゃ

時だけが過ぎる。

特養施設を訪れ

母の部屋へ向かう。

1年振りに会う母は

一回り小さく

なったように見えた。

元気にしているかと聞く母。

俺は元気だと答える。

寒くなってくるからと

手編みの靴下を差し出す母。

サイズは子供用

微笑み両手で受け取った。

団欒

日の暮れるのが早くなった。

肌寒さも感じる北国の秋。

家路の住宅街を歩くと

カレーの匂いが漂う。

お腹空いたな。

今日の晩御飯はなんだろう?

幼い日、 夕食時に

帰宅する友人を

羨ましく見送った。

今は妻が美味しいご飯を

作って待っていてくれる。

この上ない幸せだ。

子狐

ティーショットを終え

カートに戻ると先客が。

子ぎつねのようだ。

少し微笑んだような表情が

何とも愛くるしい。

“ごめん。上げられないんだ。

強く生きるんだぞ。”

草むらへ戻っていく際

もう一度振り返り頷いた、

気がした。

昨年の夏のこと。

元気にしてるかな?

親心

少し言い過ぎたか。

多少の後悔はある。

後先考えず自由に生きる

娘の将来を案ずればこそ

つい口調もきつくなる。

もう子供じゃないんだよな。

そう呟きながら

フォトブックの

ページをめくる。

私の背中で満面の笑みを

浮かべる幼き日の娘。

いつまでも大切な我が子。

便り

「元気にしてるか?」

『オヤジ?』

「すまんかったな。」

『生きてたのか?』

「そんなはずないだろ!」

『どうして?』

「たくさん背負わせてすまんな。」

『・・・・。』

「もういいんだ。」

「もう自由で、、」

ピッピッピッピッ!

目覚ましが鳴る。

親父の命日か。

童心

学校遅れるよ!と、お母さん。

急いで玄関を出た。

間に合うかな?

小走りで通い慣れた道を急ぐ。

前方にゆっくり歩く女の子

同じクラスのユキちゃんだ。

「おはよう! 遅れちゃうよ。」

『もう無理だよ。』

「大丈夫!一緒に走ろう!」

2人は手を繋ぎ

笑顔で駆け出した。

実母

学校から帰った。

今日は遅くなり外は真っ暗だ。

部屋に戻る途中、

歌声が聞こえた。

そっと開けると、

中には母がいた。

窓の外を見上げ

「いつも見ていた故郷の空を ♪」

「泣きたくなるね。でも泣いてばかりいられない。」

大好きで、だから憎んだ。

母の悲しみを知った。

直向

人には優しく。

誰かにお願いされたら

どんな時でも笑顔でいいよ!

そしたらみんな貴女を

愛してくれるから。

亡くなった母の教え。

今日友達から

「あんたの彼氏、あたしと付き合うことになったから。」

え? なんで? そんなの嫌だ。

でも口を衝いた言葉は

『いいよ。』

生家

「いしや~きいも~!」

遠くからお馴染みのフレーズ。

貧しかった幼少期。

ご近所が集まる中

うちだけはいつも家の中。

ある日、母が今日は特別

と言って1本だけ買ってくれた。

弟と3人分けあって食べた。

美味しかった。

思い出の詰まった

あのあばら屋も今はもうない。

幼心

父と母の言い争う家を出て

とっぷり暮れた田舎道を歩く。

吐く息も白く最北の地は

まもなく極寒の季節に入る。

普通に食卓を囲み

普通に床へ就いて

普通の朝を迎える。

そんな普通の家庭に

育ちたかった。

涙が溢れてくるけど

満天の星空を見上げ

明日も生きようと思った。

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