ロスト・ケア ネタバレなし(葉真中顕)
序盤抑えるべきポイント
相関図
本編あらすじ
羽田洋子は、幼子を抱えるシングルマザー。身体の麻痺と認知症を患った母を介護する。初めのうちは世話になった母親に恩返し出来ている様な気がして達成感があった。しかし日々繰り返される終わりなき奉仕。その対象者である母からの暴言などで、徐々に心身ともに疲弊していく。幼子への育児も並行して行いながらダブルワークで生計を立てる。出来る事ならば、この苦しみから逃れたいと考えるようになる……。
斯波宗典は、介護職員として日々お年寄り達の世話に奔走する毎日。初めこそ介護はこれから無くてはならない仕事と国も全面的にバックアップした。給料も高いとは言えないがそれなりの報酬もあった。しかし徐々に風向きは変わる。介護とは奉仕の精神で行うもの。それで金儲けをするとは何事だ、という論調が次第に強まる。するとそれに引き摺られる様に国は手のひらを返す。助成金など少しずつ減らされ、職員の待遇も悪化の一途を辿る。それでも介護は増える一方。実際に携わりもしない人間達の机上の正義は関係者を蝕んでいく。
佐久間功一郎は、総合介護企業の営業部長。介護こそこの国の未来を変える。そう息巻いて日々営業に勤しむ。しかし先述した通り、実情を知らない者達の薄っぺらな正義により介護業界はどんどん世間からつま弾きにされる。親子でも苦しい介護の仕事。誰が他人を長期間、しかも無償で世話できるのか?理不尽さにやり切れず、彼は別の道を進む事になる。
大友秀樹は、地検に所属する検察官。高校時代の友人である佐久間の行動から周り回って、今回の連続殺人に辿り着いた。本来であれば見逃されていたであろう事実に気付けたのは、佐久間が持っていたと思われるデータが、ある事件の証拠として挙がった為だった。そこから犯人を絞り込んで行けたのは、部下・椎名の分析力によるものが大きい。そしていよいよ、大友達は犯人と対峙する……。
ネタバレなしで本編を楽しむ
本編の見どころは、最後の大友と犯人の対峙シーン。
幼少より裕福に育ち、性善説に基づく絶対的正義を疑わずに大人になり、そしてその正義を盾に犯罪者を訴追してきた大友。
その大友の正義が今回の犯人に届くのか?正義とは一体何なのか?
恐らく、読者それぞれが自問自答する事になると思う。
介護は奉仕。それも正論。介護は地獄。それも、間違ってはいない。
相反する事実がコインの表裏の様にくっついて離れない。
そんな我々は、果たして正義の中で生きていると言えるのか?
『正義』について今一度考える。現在の社会に生きる者に必要な事ではないか?
読者の感想
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