ツイッター小説 140字の風景(連載)

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140字の風景(連載コーナー)④

新作発表

1.

“ さあ、ゲームの始まりです!”

店内から出てきた男が

高らかに宣言した。

本日は国民的人気の

新作ゲームが発売予定。

店先の予約客が

その時を待ち侘びていた。

矢先の出来事だった。

《どうなってる!早く新作を出せ!》

“ もう始まっていますよ!貴方が主人公です!”

2.

困惑する予約客に

その男は次のように続ける。

“ 貴方たちは組織に追われる逃亡者。追手から逃れ無事逃げ切れたらミッションクリア。”

《ふざけるな!早くゲームを寄越せ!》

男は動じる事なく

“ 但し、捕まればその場で処刑されます!”

場はざわつき

笑い出す者までいる。

3.

何を言っているのだ?

私も皆と同じ気持ちだった。

その時!目前の男が倒れた。

人だかりが割れ、悲鳴があがる。

側に、血だまりが見えた。

“ 早く逃げないと皆さんも、こうなりますよ!”

店舗から出てきた男が言った。

“ それと見事、逃げ切った方には賞金1000万円です!”

4.

狂っている。冗談じゃない。

しかしこの男は恐らく本気だ。

周りの人達は困惑しながらも

それぞれ逃げ始めた。

どうする?捕まれば……。

いやそれ以前に、

逃げなければ殺される。

私は無意識に会社へ向かった。

誰か知ってる人の所へ。

自分が正常か、確かめたかった。

5.

会社に戻ると

通常と変わりなかった。

デスクに戻り仕事を開始する。

「村上君。」課長に呼ばれた。

『はい。ご用でしょうか?』

「調子はどうだ?」

『はい?調子といいますと?』

「大丈夫なのか?」

『え?』

「ゲームは始まってるぞ!」

持っていた銃を私に向けた。

6.

私に銃口を向けていた

課長が椅子から崩れ落ちた。

デスクに向かっていた同僚達が

銃を構え、私に向かってくる。

私は咄嗟に課長が

持っていた銃で応戦する。

それが何人かに当たり

次々に倒れていく。

撃ってしまった。

自分もこの異常なゲームに

足を踏み入れたのだ。

7.

楽しい。最高じゃないか。

不思議な高揚感に酔った。

同僚達を次々に撃ち殺し

そのまま社外に出ると

直ぐに敵が襲ってくる。

また、それを撃ち殺す。

死ね、死ね! ウッ!

衝撃が頭を射つ……。

(あ~あ!ゲームオーバーか。)

画面を眺めて

少年は、ため息をついた。

任務遂行

1.

「本当にあいつなのか?」

前方の男を尾行しながら

先輩刑事の青木が私に尋ねる。

『間違いありません。』

防犯カメラには

隠れもせず男が写っていた。

「何か手掛かりがあったのか?」

青木の机の中にUSBを見つけ

密かにコピーしておいた。

悪いが今回は私の手柄である。

2.

『ええ。独自のルートで情報が。』

私が答えると、

「早まるなよ。ガセもあり得る。」

不機嫌そうに青木が吐き捨てる。

不意に前方の男が路地に入った。

慌てて距離を詰める二人。

しかしもう男の姿はなかった。

『これではっきりしましたね。』

青木は不服そうに俯いた。

3.

自分達をマイタと言うことは

ほぼヤツの犯行で間違いない。

防犯カメラの映像もあるし

逮捕は時間の問題かな。

私は一人ほくそ笑み

ヤツの身元特定を急いだ。

しかしいくら調べても

ヤツの名前すら分からない。

仕方ない。例のルートを使うか。

幸いにも青木は外出中だ。

4.

私が行き詰まっているのを

青木は十分認識したはず。

それでいい。

そう思っていて貰えれば。

最初から容疑者の身元は

分かっている。

私が容疑者のデータを消した。

青木がいくら頑張っても

容疑者には辿り着けない。

あのUSBも私の仕掛け。

全て予定通りだ。

5.

「まだ身元が分からないのか?」

青木が苛立たしく尋ねる。

『すみません。今暫く。』

心にもなく答える。

「どこへ行く?」

『聞き込みです。』

そう答え、私は直ぐに彼を訪ねた。

『時間がない。逃げるよ。』

“お前は大丈夫なのか?”

それには答えず、港へと急いだ。

6.

正直予想もしなかったが

公安の任務にも疲れた頃だった。

監視対象者に惚れてしまうとは。

刑事部を欺きながら

彼を逃亡させる任務ではあった。

その行き先が変わったのと

私も一緒に付いていく事以外

予定通りに進んでいる。

前方に事前に用意した

ヨットが見えてきた。

7.

『全て予定通り。このヨットで何処か遠くへ。』

二人でヨットに乗り込む

その時、タイヤを泣かせ

見覚えのある車両が

直ぐ側で止まった。

「詰めが甘かったな。」

ショックで視界がぼやけ

直ぐには誰か分からない。

「ここまでだ。」

手錠を片手に青木が立っていた。

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