140字の風景(感動系)③
幻夢
微睡みの中、
台所から食器の擦れる音。
テレビでしまじろうが笑う。
「ほら!早く食べなさい!」
『はーい!』
何故? 妻と娘が!
部屋の戸を開け放つ。
「おはよう!」
『おはよう!パパ!』
帰ってきたのか!
強く二人を抱き締めた。
アラームの音。
頬を濡らす涙だけが残る。
家族
パパとママ
それとお姉ちゃんが二人。
僕らはそこへやってきた。
7歳の時ママがいなくなった。
でも寂しくなかった。
パパとお姉ちゃん達がいる。
14歳の時
お姉ちゃん達がいなくなった。
少し寂しくなった。
パパが1人お酒を呑んでいる。
元気出して!
僕たちがいるよ。
生母
夕飯は、、お弁当にしよう!
帰り道にあるお店。
いつものおばさんが迎える。
少しぽっちゃりした
丸顔の優しい顔は
まだ見ぬ母を想像させる。
いつものように唐揚げを1個
オマケしてくれた。
お礼を行って去ろうとすると
「今日、誕生日だね。」
そうだった。
でも、何故?
お袋
『うるせーな!』
受験が近くイライラしていた。
そこに勉強しろと
口煩く言われ思わず罵って
出てきてしまった。
母一人子一人。
寄り添って生きてきた。
大変さもわかっているのに。
夜遅く帰ると
朝早い母さんは寝ていた。
テーブルに俺の好きな
おにぎりが置いてあった。
帰還
ここはどこだ!
暗闇の中を走り続けている。
一寸先も見えない状況で
しかし何故か
行くべき方向がわかる。
そう言えば
どこに向かっているのだろう?
後方から足音が。
急がなくては。
前方に微かな光が見える…。
「良かった。目が覚めて。」
涙目で妻が見詰めていた。
父子
昨夜から降り続く雨は
明け方を迎えても衰えない。
予定されていた運動会は
残念ながら中止だろう。
小6の息子にとっては
最後になるが仕方ない。
一生懸命練習したヨサコイ。
落ち込む姿が可哀想だ。
” 父さんと踊るか? ”
私が踊り始めると
照れながら息子も踊り始めた。
事情
牧場の朝は早い。
ここに来て二度目の冬。
身震いする寒さを耐え
やっと寝床から這い出る。
早朝とは思えぬ暗さに
今日もうんざりだ。
それでも遠くで
催促する鳴き声に
牛舎へと急ぐ。
「おはよう!今日も頼むな。」
事情すら聞かずに受け入れた
親父さんの思いは忘れない。
胡桃
祖母はいつも掌で
胡桃を転がしていた。
” お婆ちゃん!何してるの? ”
私が聞くと、
「これをやると呆けないんだ。」
そう言って手を動かす。
“ 僕もやりたい!”
そう言う私に、
「やってみるかい?」
残りの胡桃を渡し
二人並んで一緒に転がす。
優しい眼差しを忘れない。
夢叶
何十年振りだろう?
母校の校門前で感慨に浸る。
記憶を辿ると高校卒業から
もう20年の歳月が流れていた。
色んなことがあった。
やっぱり思い出は学校祭。
皆で将来を語り合った。
玄関に見覚えのある女性。
“ 先生さようなら!”
生徒から声が掛かる。
夢を叶えたんだな。
彼岸
真っ黒な光沢を見せ
部屋中に納骨堂が並ぶ。
僅かな線香の香りが
厳かな空気を際立たせる。
記憶を辿りながら
その中を歩くと少しずつ
思い出してきた。
観音開きの扉を拡げ
用意してきた花を手向ける。
そして点いていた蝋燭で
香を焚き付けた。
“ 親父! 久しぶりだな。”
挨拶
やはり緊張する。
緊張しない訳がない。
結婚報告で彼女の実家へ。
父子家庭で手塩にかけた
可愛い一人娘だ。
茶の間に通され二人並んで
お父さんに相対する。
『お嬢さんと結婚させて下さい!』
長い沈黙のあと、
「やっと、肩の荷が降りた。」
そう言って台所へ消えた。
『お父さん…。』
我が子(かなたんリクエスト)
私の息子は手が掛かる。
他の子よりもほんの少し。
私のことを困らせる。
他の子はどうだろう?
時々本当に泣きたくなる。
でもね。
それでも私の大事な息子。
このお腹を痛めて産んだ
大切な大切な息子。
どんなに辛くても共に生きていく。
だけど、虫だけは勘弁してね 😭
母娘(藤田めぐるさんリクエスト)
『お母さん、一緒に病院へ行って!』
体調が悪いはずなのに
頑として首を縦に振らない。
今年、喜寿を迎えた。
四十も半ばを過ぎ
毎日に追われる
私もまた、余裕はない。
「私はこの家で死にたいの。」
窓外を見詰め、そう呟く母を
分かっていなかったのは
私かもしれない。
お遣い
“ 気をつけてね!”
ママにお買い物を頼まれた。
いつものコンビニだから
ちゃんと出来るもんね。
信号、赤は止まれ。
青だ!右、左、確認。
もう着いた。 卵と牛乳。
「エライね。お遣いかい?」
店員さんも優しい。
「気をつけてね!」
大丈夫!
パパ付いてきてるもん 笑
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今度の担当は人たらし…。
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祝福の輪の中に…。
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