ツイッター小説 140字の風景(アラカルト)

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140字の風景(アラカルト)③

仙台

前に帰ったのはいつだったか?

仙台駅の手前、

長町駅で降りた。

原っぱが広がっていた

この土地は再開発で

高層マンションや

大型店舗が広がり始めている。

そんな街並みを通り抜け

我が家へ向かう。

ここは変わってないな。

牛タンも良いがお袋の手料理。

ずんだ餅も懐かしい。

上手

商談は順調。

金額も問題ない。

納品も完了している。

帰り際ライバル社の

営業担当を見掛けた。

意味深に笑みを浮かべる。

気にせずその場を去った。

翌朝出社すると慌ただしい。

昨日の会社が

経営破綻したらしい。

会見で債権者代表として

あの営業担当が座っていた。

恋文(はれちゃん)

はれちゃん!

元気にしているかい?

随分と長い事

待たせてしまった。

2年の約束が

もうこんなにだね 💦

最近ようやく一人前の仕事が

出来るようになったよ。

あの約束、まだ有効かな?

もう少しで

君の街へと帰れそうだ。

叶うのなら思い出の丘で

君を抱きしめたい。

恋文(くまちゃん)

くまちゃん!

ほんとは直接言いたいけど

照れ臭いので手紙にします。

いつも仕事しながら

家の事もやってくれて

ありがとうね。

俺は気が利かなくて

いつも無理させてごめん。

たくさんの花婿候補から

選んでくれて感謝しています。

これからもよろしくね。

愛してるよ。

秋山

紅葉も色づき

登山者も増えてきた。

だがこの季節、日没との戦い。

日が落ちると

山は別の顔を見せる。

また来年くるからな。

山頂を見上げ、心で呟く。

そろそろ行こうか!

彼女を促し下山する。

ピィー! 遠くで鳴き声が。

エゾシカが親を探してる。

俺達も急ごう!

道化師

師走の慌ただしさも

街中の喧騒に溶け込む。

俺はピエロだ。

道端でパントマイムを

披露しながら

あるカップルに目をやる。

しばらく言い争い

男はその場から立ち去った。

1人啜り泣く女性。

目前に近付き

ピエロは何度もおどけた。

やがて女性が

泣き笑いに変わるまで。

旧友

終電は出た。

もう少し呑んでいくか!

雑居ビルの地下に降り

入り口を開けると

カランと音がした。

奥から懐かしい顔が覗く。

マスターはカウンターの

席を促しながら

「生きてたのか? 笑」

『辛うじて! 笑』

積もる話もある。

10年前と同じ

ジンのカクテルを頼んだ。

誇り

武蔵坊弁慶。

諸説あるが源義経に仕えた男。

主を守るためその身に

無数の矢を受けて尚立ち続け

その眼光は真っ直ぐ前を

見据えたまま事切れていた。

その壮絶な佇まいは

やがて来る源氏の衰退を

確信していたかのよう。

善と悪は移り行く。

それ故に歴史は繰り返す。

失脚

手柄を全て自分の物とし

出世競争を勝ち抜いた男。

そこから王として

振る舞うはずだった。

だが創業者の傀儡政治は続き

偉大なるイエスマンの野望は潰えた。

ならば次に進めば良いが

その度量はない。

今まで踏み台にしてきた

社員たちの冷笑を感じる。

彼は何を思うのか?

迂闊

昼時は特に混む。

週末の今日など

満席状態が続く。

会計と新規客が交錯する中

財布がないと騒ぐ者が。

周りの客も巻き込み

ケンカまで始まった。

止めてください!

収めようと間に入るが

熱くなった者達は

容易に止まらない。

ふと気付くと

当事者は消えていた。

錯誤

目の前で薄ら笑いの男。

もう1時間以上睨みあう。

詐欺容疑で連行したが

ずっと沈黙を続ける。

証拠は固まっている。

時間の問題だ。

なのにこの余裕は何だ。

こちらが焦りを感じる。

落ち着け。

もう一度深呼吸をする。

「観念するんだな。」

薄ら笑いの男が言った。

人生

号砲が鳴りスタート。

42,195kmの旅の始まり。

我れこそはと先走る人。

抜かれたらムキになり

抜き返す人。

最初からやる気のない人。

これらの人達は

必ず途中で脱落する。

最後にゴール出来るのは

どんな時も同じペースで

走ることが出来る人。

人生によく例えられる。

re:

秋が終わり冬が来て

その冬もやがて終わり

春を迎える。

季節は移ろい

何度も繰り返すけど

心に沈むこの思いは

いつまでも同じ場所で漂う。

ならば心を暖めよう。

幸せを積み重ね

少しずつ少しずつ暖めて

沈んだままの思いを

溶かしてやればいい。

きっときっとやり直せる。

羞恥

年の瀬で街は混雑する。

銀行も例外でない。

ATMにもたくさんの人達が。

みんな少し苛立っている。

年配の女性が

操作に手間取った。

後ろで舌打ちする中年男性。

他の人も

冷やかな視線を向ける。

その時、

後ろから現れた若い男性。

「おばあちゃん大丈夫?」

皆が下を向いた。

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