ツイッター小説 140字の風景(恋愛)

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140字の風景(恋愛系)①

郷愁

少し遅くなった。

時刻は18時。

結婚して3年、四度目の秋を

迎えようとしている。

駅へ向かう交差点、向こうから

一人の女性が歩いてくる。

懐かしい顔、

もう何年になるだろう。

横には優しそうな男性。

すれ違い様、

彼女がこちらを見た気がした。

振り返らず家路へと急いだ。

漣(さざなみ)

ふと止まった交差点。

窓からあの店が見えた。

懐かしさが込み上げる。

あの店が気になると

タクシーで送る

窓の外を君が指さした。

翌週訪れた店は

レトロな雰囲気のある店。

二人で将来を語り合った。

また絶対来ようね!

それが最後の言葉。

信号が変わり

店は遠ざかっていく。

終止符

「楽しかったね」

「うん」

「今度は少し遠くへ行かない?」

「そうだね」

「どうしたの?」

「え?何でもないよ」

「変なの!笑」

「渡したいものがあるんだ」

「え? 何? 笑」

「これを」

「え!これって!」

「うん」

「覚えててくれたんだ」

「うん」

「ありがとね」

願い

わがままで

素直じゃなくて

すぐ泣いて

でも誰よりも優しく

頑張りやさん。

いつも

ハラハラしながら見ていた。

そんな彼女がいなくなって

もうどれくらい経っただろう。

元気でいるだろうか?

夢は叶ったかな?

雲一つない青空を見上げる。

今日は

そんな彼女のバースデー。

cross to you

cross to you

いつか貴方と聞いた。

ピアノの音色と共に。

キャンドルの炎に照らされた

貴方の顔を目が離せず

見つめていた。

貴方は何を思っていたのか?

結局聞けずに今日まで。

あの日からずっと

貴方の面影を追って。

不意に涙が頬を伝う。

この先もずっと

cross to you

七夕

女1人生きていくのは

本当に大変なことだ。

分かっていたはず。

それでも時々挫けそうになる。

そんな時、

力をくれるのは

やはり愛娘の存在。

それだけを守るため

必死でやってきた。

それともう1つ。

年に一度だけ送られてくる。

差出人不明の手紙 。

あの人の残り香がした。

逢瀬

雨音が静かに奏でる。

平日の昼下がり。

こんな日が大好きだ。

とても落ち着く。

ベッドの中で微睡んでいると

この時が永遠に

続いて欲しいと願う。

隣で彼女の寝息が聞こえる。

雨音の調べに

ゆっくり溶けていく。

徐々に夢の中へ。

目覚める頃には

また現実が待っている。

花火

遠くで花火が鳴っている。

真夏の夕暮れは長く

ようやく夜の帳が降りた。

窓を開け放ち

音のする方へ目を向ける。

閃光が走り空一面に描かれ

胸を震わす爆音が響く。

同時に若き日の自分と

傍らに彼女が現れた。

手を伸ばすと、消えた。

空に最後の絵柄が散っていく。

晩夏 (ウサ子さん:夏の終わり)

風鈴の音が聞こえる。

夏を惜しむかのように

少々騒がしい。

もうすぐ秋ね、と呟くと

この夏の忘れ物を探す。

スマホを取り出し

見慣れた番号に繋ぐ。

現在使われておりません。

返ってきたのは機械音。

そう、やっぱりね。

夏と共に終わる恋は

静かに秋を運んできた。

待ち人 (もかさん:親愛なる貴方へ)

横から貴方が消えて

何度目の夏だろう?

私も随分歳を重ねた。

貴方が追いかけていた

男鹿のオフショットは

今や私の十八番だ。

この庭先で佇んでいると

ふと貴方が現れる気がする。

今頃どこで

何を追っているのか?

私はもう少しここで

待ちぼうけてみようかな。

初恋 (まっきーさん:初夏)

自転車を走らせると

汗が滲んでくる。

心地よく吹く風がそれを拭う。

テトラポットが並ぶ

風景が見えたら

目的地はすぐそこ。

波打ち際から眺める朝日は

もう夏の力強さを感じる。

そして今年は、

もう1つ楽しみが。

日差しを一杯に

浴びた彼女が

眩しそうに微笑む。

忘却

店内はガランとしている。

前来たのはいつだったか?

もっと混んでいた気がする。

有名店に行ってみようと

何ヵ月も前から予約していた。

店の雰囲気も料理も満足し

ほろ酔いで二人、店を出た。

その時から全てが止まった。

そして今日全て忘れる。

色褪せた君の面影と共に。

詫び

郵便受けに封書が一通。

差出人に心当たりはない。

部屋に戻り目を通す。

読み始めて直ぐに

あの頃へと戻った意識。

後悔と懺悔の思いが募る。

訳を告げられぬまま

姿を消した自分を

憎んで欲しかった。

名字が変わったのか。

幸せで良かった。

もう一度差出人を見つめた。

もしも

街中で声を掛け

意気投合し居酒屋へ。

年は同じ19。

そこは内緒でね 笑

上京してデザイナーに

そう話す彼女は

とびきり輝いていた。

結局朝まで飲み明かし

今日は帰るね

と紙片を差し出す彼女。

連絡して!と手を振る。

あの紙片、無くさなかったら。

30数年前のほろ苦い思い出。

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