ツイッター小説 140字の連載小説『サイコとシスター』③

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140字の連載小説『サイコとシスター』③

31.

思惑が外れ、三人での珍道中となってしまった。 前方で二人は楽しそうだ。またコイツらのペースか。何とかこの新助を排除しないと……。 「あれっ?スマホが無い!」 美咲が大声を上げた。 《え?マジか!》 これはチャンスが巡ってきた。 『とりあえず、手分けして探そう。』

32.

《最後にスマホを確認したのは何処?必ず俺が見つけるよ!》 新助はまた点数稼ぎを目論む。 『新助はそっち側を戻って探せ!俺は反対側を探す。美咲はあまり動かずこの辺を頼む。』 《なんでお前が仕切るんだよ!》 「ごめん。私のせいだね。」 『今は見つける事が先決だ。』

33.

道の両脇に沿って俺達は探索に入った。俺は山側、新助は谷側になる。 後方の美咲はもう見えない。かなり道を戻った事になる。 俺はスマホを探すフリをしながら、反対側の新助を監視していた。 《あった!あったぞ!》 新助は身を乗り出す様にして、急斜面に手を伸ばしていた。

34.

又と無いチャンスだ。 『見つかったのか?』 《おお!あそこにある!手伝ってくれ!》 新助が道端から2m程の所にある、スマホらしき物体に手を伸ばす。 『脚を持ってやる。もう少しだろ?』 《そうか!頼む!》 急斜面にダイブする形でいる新助の両脚を俺はしっかりと掴んだ。

35.

やっぱり俺はツイている。 早速、チャンスが訪れた。 《もう少し下げてくれ!もうちょっとだ。》 『分かった。いま下げる。』 悪いな新助。お前は邪魔なんだよ。 奴の左脚を左手で、右脚を右手で掴んだ状態。このまま押し込めば新助は谷底だ。くたばれ! 両腕に力を込める。

36.

「雄くん!見つかったの?」 背後から聞こえた声は……美咲だった。 いつから居たんだ。まさか見られたのか? 「新ちゃん、無理しないでね!」 《美咲!もう少しなんだ。》 「私も手伝う!」 その後、三人で何とかスマホを拾い上げて事なきを得た。 気付かれてはいないな……。

37.

「新ちゃん、ごめんね。」 今にも泣き出しそうな美咲。 しかし次に放たれた言葉は耳を疑うものだった。 「新ちゃんはここで帰って。」 《え?いや最後まで付きあ……》 「お願い。帰って。」 いつになく真剣な表情。 「私は雄くんと行く所があるの。ね?そうでしょ?雄くん。」

38.

新助が去り再び2人きりになる。 「さあ、行きましょうか。」 そう言ったきり美咲は何も話さず、ただ黙々と俺の前方を歩く。 その背中を見つめながら彼女の真意を探る。 何が目的だ?こちらの目論みに気づいているのか?分からない。 「間もなく樹海よ。」 美咲は振り向いた。

39.

『ああ。』 しかし美咲は依然こちらを見つめる。 「まだ思い出せないのね。」 そう言って樹海へと進んでいく。 ……何がだ。思い出す? 整理の付かない状態で彼女の後に続く。いつの間にか辺りには霧が立ち込めてきた。 『思い出すって何の事だ?』 美咲の背中が霞んできた。

40.

話は昨日に遡る。 “「雄くんにその話はしないで。」” 《それじゃ……》 「幼なじみの山瀬雄。」

◼ ◼ ◼

《記憶喪失?》 唖然とする新助。 「間違いない。彼はまだご両親が存命だと思っている。」 《火事の事も……?》 「覚えてないよ。たぶん。」 山瀬雄には秘密があった。

41.

『美咲!何処だ?』 完全に美咲の姿は見えない。 立ち込めた霧は、一寸先の視界をも塞いだ。このままでは出口を見失ってしまう。彼女は何を考えている? 「あの時と同じよ。」 背後から美咲の声が……。 『あの時?』 「貴方と私は幼なじみ。あの日もこんな深い霧だったね。」

42.

幼なじみ? そんなの俺にいたか? 生まれながらのサイコパスに友達などいる訳がない。 ……いや……どうだった? 記憶が曖昧になってきた。 思い出が音を立て崩れ始める。 『昔の俺を知っているのか?』 美咲は鼻先が触れる程の距離まで近づいていた。 「まだ僅か7歳だった。」

43.

「あの日は幼稚園の発表会だった。一度家に帰ってから遊ぼうという事になった。」 霧の向こうで美咲は語り始めた。 「貴方はほんのお遊びのつもりで、樹海に行ってみようと言い出す。」 嫌がる美咲の手を引き、俺は樹海へと向かったらしい。 そこで迷って夜になってしまった。

44.

大人達は総出で探した。 幸い直ぐに発見され事なきを得た。 皆が胸を撫で下ろす中、 俺の両親は烈火のごとく俺を叱りつけた。 「貴方は優しい子だったけれど、悪戯好きが過ぎたのね。」 当時を思い出し美咲が語り続ける。 「そこまでなら……子供のよくある話で済んだのに。」

45.

怒らせたお母さんに謝罪の意味も込めて朝御飯を作ってあげよう。 「貴方は反省の意味も込めてよね?」 美咲は語り続ける。 「でもお母さんのマネをしてフライパンに火を点けて……。ご両親の事は残念だと思う。」 《おーい!美咲!》 ん?新助の声か? 《違うみたいだぞ!》

『ツイッター小説・サイコとシスター、㉛~㊺』

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