ミニ小説 傑作集 およそ2000文字程度に、長短合わせた内容を盛り込んだ小説集

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ミニ小説 傑作(大人の秘め事)

激愛

夕方の5時で

パートの仕事は終わる。

お疲れ様!

店長がこちらを見ず

声を掛けた。

更衣室に向かい

着替えを始める。

突然、後ろから

抱きすくめられる。

振り返ることなく

その腕に右手を添えた。

「誰か来たら終わりですよ。」

『その心配はない。』

店長が囁いた。

聖夜

優しく唇を重ね

その奥の温もりを舌先で探る。

首筋を指先でなぞり

仰け反る背中を支え

そっと倒れ込む。

期待に高ぶる気持ちが

ブラウスのボタンで

少し手間取らせる。

もどかしさに耐えながら

聖夜二人は一つになる。

シャンパン香る部屋中に

彼女の吐息が溶けていく。

渇き

突然襲ってくる

言い様のない孤独と焦燥。

それを拭いたくて

温もりと繋がりだけを追う。

それでも満たされない渇きに

忍び寄る絶望感。

自分は何を求め

どこに行くのか?

今日も満たすべく相手を探し

1人、街中を彷徨い続ける。

しかし刹那の繋がりに

心が潤うことはない。

秘匿

部下思いで仕事は出来る。

誰からも好かれている部長。

40を過ぎて独身、

女性陣の人気も高い。

私もその一人である。

しかし当の本人は

あまり感心がないようだ。

…先程から課長と

何やら話込んでいる。

主婦でもある彼女の瞳が

怪しげに光るのを

私は見逃していない。

余韻

微睡みから徐々に

拓けていく視界。

柔らかな陽射しが

冬の終わりを感じさせる。

肩に触れる温もりに振り返ると

君の寝顔に遭遇した。

昨夜の劣情を少し後悔する。

それに気づいたかのように

君はゆっくり瞳を開いた。

しかし悪戯に微笑む表情が

杞憂であることを伝えた。

好機

失恋したことは

噂で聞いていた。

弱っている所に付け入るのは

私の美学に反する。

傷付いた心に寄り添いながら

次のチャンスをひたすら待つ。

意外にも彼女から声が掛かる。

気晴らしに

付き合って欲しいと。

食事の席でそれとなく、

前の恋を探る。

“ それにはもう興味がないの。”

妖しい眼で、彼女はそう囁く。

雨宿り

その日は朝から雨だった。

何となく

予感めいたものはあった。

そして当然のようにそれは現れ

私をただ、ひたすら、

むさぼる。

まだ雨は降り続いている。

時間や空間がゆっくり流れ

夢と現を行き来する。

欲望をひとしきり吐き出し

互いに微睡み始めた頃

再び、今が動き始める。

もう雨は止んだらしい。

欲望

互いに高まりあった後に

ほどけた緊張は、心地よさと

多少の気だるさを連れてくる。

しばらく天井をみつめたまま

乱れた呼吸を整えているうちに

また次の欲望がやってくる。

しかしその頃にはもう君は

高まりに手を伸ばしていた。

それに誘われるように

再び燃え上がる。

2度目とは思えぬ勢いに

眼を潤ませる君を

愛しさを感じながら

攻め立てる。

拒絶の言葉とは裏腹に

全身で全てを受け止める君を

まだまだ許す気にはならない。

行きずり

行き付けのバーカウンターで

グラスを傾ける。

週末は疲れやストレスを

洗い流しにやってくるのが日課だ。

お気に入りのダイキリを嗜む瞬間に幸せを感じる。

「お一人ですか?」

カウンターの端に座る私の隣へさりげなく男が座った。

そちらへ顔を向けた私の表情は強張っていたに違いない。

「これ、間違って注文してしまいました。良かったら召し上がって貰えませんか?」

差し出したグラスにはダイキリが。

粋な男の計らいに笑みが溢れた。

『マスター!この人にマティーニを。』

彼のグラスを見ながら注文をかける。

「特別な夜になりそうですね。」

グラスを翳しながら男はそう呟いた。

私はそれに応じながら、男の左手に右手を絡めた。

逢瀬

1ヶ月振りの逢瀬。

燃え上がらない訳がない。

互いに枯渇したものを

補うようにひとしきり求めあった。

愛撫すらもどかしく衣服を纏ったままの結合。

一度放った後、

その前の行為を詫びるように

優しく丁寧に身体中を愛でる。

次の逢瀬まで

片時も忘れないよう

互いに互いの痕跡を植え付ける。

しかし裏腹に、時は刻み続けた。

名残惜しく抱き締め合い、もう一度舌を絡める

挑発

今夜も日付を跨ぐことはない。

この人はいつも通り紳士。

私をマンションまでしっかり送り届ける。

タクシーを待たせ、

私をオートロックの玄関まで連れていき

“ それじゃ、おやすみなさい。”

と言って帰っていく。

そういう、つまらない男。

『いつもお行儀がいいのね!』

後ろ姿に挑発を投げつける。

踵を返しロック解除しようとしたその時

右手を掴まれた。

そのまま引き寄せられ

「貴女が鎖を解いたのですよ。」

『そんなっ…』

弁解しようとした唇は塞がれた。

劣情

多少酔いも手伝って

ここまで来てしまった。

お喋りをして過ごすには

まだ夜は長すぎる。

終電を逃したのは口実で

本当は熱い思いの丈を、

隠しきれずホテルへと導いた。

ぎこちない君を残して

バスルームに消える。

湯を張りながら心を落ち着け

妖しい空間へ君を誘う。

もう後戻りは出来ない。

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