弧虫症 ネタバレなし(真梨幸子)タワーマンションに住む主婦達の狂演

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弧虫症 ネタバレなし(真梨幸子)

序盤 抑えるべきポイント

スカイヘブンT。

T市に聳え立つ34階建てのタワーマンションである。ここの8階に住む36歳の主婦は、大手企業に勤める1つ年下の夫と中学受験を控えた小学校6年生の娘と何不自由ない暮らしをしていた。

主婦A
主婦A

来年、娘は有名中学を受験するの。

しかしそれは傍から見える姿で、その生活は見栄と虚構で塗り固められていた。家庭内はそれぞれが勝手に生活するバラバラの状態。娘は自分には懐かず、夫は仕事でほとんど構ってくれない。

何時しか、この主婦はその捌け口を “男” で晴らそうとする。元来、男好きするその容姿は、母親譲りと言われてきた。自分が嫌悪してきたあの母親に。

その思いを塗り潰すように彼女は男との情事にのめり込んでいく。妹の引っ越しを切欠に、そのアパートを売春部屋にして、月・水・金の週3回、3人の男と変質的なセックスを繰り返していく。

主婦A
主婦A

幾ら男と交わっても満たされない……。

渇望と自己嫌悪の中、彼女は自分の身に異変が起きている事に気付く。原因不明の腹痛。性器に感じる狂おしい程の痒み。図書館の医学書で、それがケジラミである事が分かった。怒りに震えながら剃毛し、金曜日の男・高校生のミノルであるとピンときた。彼との性交の後から、この痒みは始まって入る。

次の金曜日にあのアパートでミノルと会い、彼女はその件をぶつけ、関係は終わりだと告げる。合鍵を奪い、部屋を叩き出した。興奮冷めやらぬ中、再びの来訪者に扉を開けると見知らぬ女が。

女は、彼女に「タクヤが死んだ。」と告げる。タクヤとは月曜日の男。女はタクヤの母親だ。責任を追及された彼女は、そのアパートを引き払う事を決心する。

相関図

本編あらすじ

スカイヘブンTに住む主婦A。

誰もが羨む幸せな家庭を演じながら、自らに潜む女に翻弄される。妹が住んでいたアパートをそのまま借り、3人の男と定期的に関係を持ち心のバランスを保とうとする。そのうち体の異変を感じ、腹痛や耐えがたい痒みを覚える。

そんな中、男達の一人が死亡する。その男の母親が乗り込んできて主婦Aを糾弾する。危険を感じた彼女は、アパートを解約し全てをなかった事にしようとする。

その後も関係した男達に異変が起こり、彼らはいずれも体の至る所にブルーベリー状の瘤を残して亡くなっている事が分かった。

その頃から、自宅で “カリカリカリ……” という何かを引っ掻くような音に怯えるようになる。夫も最初は気のせいと言っていたが、次第にその音に気付き始める。

主婦Aは、ノイローゼなのか?精神に異常を来しているのか?

男達に異変が起こってから、自宅に妙な電話が来るようになる。出ないようにしても、何十件という留守番電話でプレッシャーを掛ける。

追い詰められた主婦Aは、妹に全てを相談しようとする。そんな矢先、受験の為の塾の夏期講習に行っていた娘の美沙子が死体となって発見された。授業中に初潮を迎え、それを男子に揶揄われた事が原因らしい。

主婦Aは強い自己嫌悪に陥ったのか、その日から姿を消してしまった。

主婦Aは、何処へ行ったのか?

相談を受けた妹は仕事の忙しさもあり、結局姉の相談に乗れなかった。その事を申し訳なく思いながら、妻と娘を失った義兄に気持ちは傾く。密かに思いを寄せていたのだ。

しかし、自分も夫のある身だ。決して疚しい気持ちは無いと言い聞かせるが、徐々に揺らいでいく。そんな矢先、夫が自宅で自殺をしてしまう。

義兄との関係はどうなっていくのか?

ネタバレなしで本編を楽しむ

主婦Aとは誰か?

ここがこの作品のポイントとなります。前半、話の主体は、長谷部麻美と奈未の姉妹であるように進行していきます。

勿論、その前提はあるのですが、新たな真実が徐々に明らかになり、物語の本質はゆっくりと姿を現してきます。

そして最終地点に辿り着いた時、あなたは何を感じるか?

スカイヘブンTというタワーマンションを通じて、主婦たちの様々な背景が見えてきます。それは気付くと手に負えない程の悪意となって、多くの人達を巻き込み奈落へと引き摺りこんでいく。

切欠は些細な事。見栄・偏見・妬み・嫉み。最高の城を手に入れた筈の彼女たちが踏み外してしまった階段は、思いの外、長く続いていたのかもしれない。

真実は、この書を手に取って見付けて欲しい。

読者の感想

再読。図書館で借りた時はコーティングされてたけど買って読んでみるとぶつぶつがー!! イヤミスの女王として作風を確立する前なので、ホラーだし終盤の勢いの荒さも目立つけど吸引力強いし「はーぶの庭」の料理や美味しそうな食べ物の描写達も本編のそれ以外の描写を思い返すとなんか、そうは見えなくなる。嫉妬やドロドロ、身勝手男にセックス依存症の主婦や姉の夫に焦がれる妹の作中でも指摘された負けず嫌いな悲劇のヒロイン気取りなど、今の彼女に通じるやばさはこの時から健在。覚えてても「うええええ」。読むならハードカバーで(鬼か)。

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