ツイッター小説 140字の連載小説『サイコとシスター』②

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140字の連載小説『サイコとシスター』②

16.

早速、女の所属する教会へ行き外出の許可を得た。1ヶ月だけの約束で。 次の朝、駅の改札で待ち合わせた。 「お待たせしました!」 両肩にボストンバッグを抱え満面の笑みで女はやってきた。 『荷物多過ぎだろ。』 「女は色々あるんですよぉ!」 シスターの格好は暫く封印だ。

17.

私服は意外とカジュアルだったが、ジーパンとTシャツとは極端だ。 「折角のお休みですからね。」 相変わらずの上機嫌。 『でも修行の一環だぞ。』 「あ!」また落ち着きが無くなる。 『ところであんた名前は?』 「本名は吉川美咲です。」 因みにシスター名はマリアンらしい。

18.

『ではマリアンと呼ぼう。』 「それは勘弁してくださいぃ!」 揶揄うと面白い。 「貴方の名前も……。」 『俺か。山瀬だ。山瀬雄。』 「じゃあ、ゆう君で!」 意外と図々しい。 「雄くん。早く座りましょ!」 さて、この旅で何処まで壊せるか。 列車は西に向かって走り出した。

19.

いつの間にか都心を抜け田園風景に変わる。 「ところで雄くん。何処に向かってるの?」 馴れ馴れしさは増している。 『どこでも良いんだけど。とりあえず故郷にでも行ってみるか?』 「故郷って何処?」 『静岡だ。』 「えっ?本当?……私もよ。」 マジか。もう、なんでだよ。

20.

しかしトコトン間の悪い奴。 見知らぬ街で困らせてやろうと思ったのに、まさか同郷とは……。 『マリアンも静岡か。生まれも?』 「マリアンは止めてよぉ。静岡生まれの静岡育ち!」 聞けば年齢も25歳と同じだ。 『どっかで会ってないよな?』 美咲はこちらをじっと見詰めた。

21.

まさか?接点があるのか? その眼差しは真剣だ。 「なんてね。会った事はないと思うよ。」 悪戯っぽく笑った。 なんだよ。脅かしやがって。どうもペースを掴めない。 そろそろ本気で行くか。 『とりあえず今日は実家に泊まる事にするぞ。』 「え?いきなり?心の準備が……。」

22.

静岡駅に到着した。 「わー!久しぶりぃ!」 大喜びする美咲。 『何年振りだ?』 「高校卒業以来……7年?」 スキップをする様に先へ進む。 『おい!自分の荷物持てよ!』 ボストンバック二つは俺の肩だ。 「雄くん、優しいぃ!」 こいつ。今に見てろよ。地獄に落としてやる。

23.

実家の最寄り停留所に着き、ここからは暫く歩く。美咲は相変わらず懐かしい景色に大喜びしている。 ふと前方から若者が一人歩いて来た。同年代に見える。 《あれ?美咲?》 「あー!新ちゃん!」 知り合いか。久し振りのご対面という感じだ。 こいつ何処かで見た事あるな。

24.

《聞いたぞ!向こうでシスターやってるんだって?》 「えー!なんで知ってるのぉ?」 得意のモジモジが始まった。 《久し振りだな!》 盛り上がった所で、 「この人は雄くん。東京で知り合ったの。」 新ちゃんと呼ばれた男はこちらに向き直った。 《雄?何処かで会ったか?》

25.

「幼なじみの新助。新ちゃんって呼んであげて!」 美咲が間に入り紹介した。しかし新助は挑戦的な眼差しで俺を睨む。 《あんた美咲の何?》 『別に……。』 重い空気が漂うも美咲は感知せず、 「もう!私の為に喧嘩はダメよ。」 満足そうにニヤニヤする。 お前の為な訳あるか!

26.

《美咲。何処泊まるんだ?実家は……。》 「新ちゃんは茶畑を継いだんでしょ?」 《ん?ああ。》 「凄いなぁ!社長じゃん!」 少しぎこちない美咲。 《うちに泊まる?母さんも喜ぶ。》 「いいね!そうする!そうする!」 そう言って美咲は新助の腕を掴む。 『おい!待てよ。』

27.

「雄くん!そう言う事だから!」 明日改めて連絡すると言い残し美咲は新助と去って行く。 『何なんだあいつは……。』

* * *

《俺、あいつと何処かで会った気がするんだけど……。》 美咲は何も言わず歩き続ける。 新助の実家が近づいた頃、 「雄くんにその話はしないで。」

28.

何としても、あの女を地獄へ送る。 いつもヘラヘラしやがって。 俺はサイコパスだ。舐められてたまるか! 美咲を陥れる策を朝まで考えた。妙案を思い付いた時、スマホの着信音が鳴り響いた。 「雄くん!昨日はごめんね!今日は行きたい所があるの。」 能天気な美咲の声だった。

29.

美咲と俺は富士の裾野にいた。 朝の電話で、彼女が是非行きたいと言う。 願ったり叶ったりだった。俺の作戦がバレているかとヒヤヒヤするほど狙い通り。 このまま樹海に誘い込んで放置してやるのだ。 「来た事あるよね?この辺。」 『ああ。』 タイミングを見て行動あるのみ。

30.

美咲を樹海へ誘い込もうとした頃、 《おーい!待てよ!》 後ろから叫び声が……、新助だ。 余計な時に現れやがって! 「新ちゃん!どうしたの?」 《山に行くって聞いたから。ちょっと心配になった。》 「うっそぉ!優しいぃ!」 照れながら、俺には挑戦的な眼差しを向けた。

『ツイッター小説・サイコとシスター、⑮~㉚』

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