柚月裕子 慈雨
作者紹介
柚月裕子
岩手県出身
2008年「臨床真理」で
第7回 ”このミステリーがすごい”
大賞を受賞しデビュー。
代表作
「孤狼の血」「朽ちないサクラ」
「盤上の向日葵」など
本編あらすじ
元.県警捜査一課 神場智則は、
定年退職後、妻・香代子と共に
四国・巡礼の旅に出た。
彼には、刑事人生を振り返り
折り合いを付けなければならない
過去がある。
それを見詰め直す旅だ。
その矢先、地元・群馬で
幼女の他殺体が発見される。
胸騒ぎがする。
かつての部下であり、
娘・幸知の恋人・緒方へ
すぐさま連絡を入れ
捜査状況を確認する。
それはまさに、十六年前と同様の手口。
そして、
今回の巡礼に向かうきっかけとなった
ある事件と同一犯の可能性。
それは、その事件で有罪になり
今も服役中の男が冤罪であることを
意味することになる。
神場の巡礼と事件の捜査がシンクロし
やり取りする中で、
彼は一つの可能性に気付く。
本編見どころ
神場が抱える取り返しのつかない過去。
この作品の最大のポイントです。
退職しても尚、心を痛める過去とは?
読み進めるうちに
少しづつ明らかになります。
警察官として長年、
誇りを持って仕事をしてきた。
妻や娘に恥ずかしくない
仕事をしてきたつもりだ。
ただ1点、その過去だけが
悔やんでも悔やみきれない。
それは果たして、冤罪へと繋がるのか?
もしそうであれば、
償わなければならない。
葛藤の中、
神場は如何なる結論出すのか?
妻・香代子、娘・幸知、
娘の恋人・緒方を含めた
人間模様と併せ、読み進めてください。
読後感
男の誇り、矜持。
柚月さんの作品を読むと
いつも思うのですが、
女性である作者が男の心根を
よく理解されていると思います。
そこの本幹がしっかりしているので
安心して作品にのめり込むことが
出来ます。
同時に、女性的見地も表現されるので、
テーマは重いのですが、
読み疲れすることなく、
エンディングまで緩やかに
押し流されます。
そして、熱いものはしっかり残ります。
「孤狼の血」など、
すっかり有名になった柚月さんですが
この安定感は、
いつまでも持ち続けて
欲しいと思います。
それはまるで
この作品のタイトル「慈雨」のように
柔らかく我々に降り注いでほしい。
そう願って止みません。
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