桜木紫乃 ラブレス ネタバレなし!こんなにも壮大で、こんなにも心震わす小説がこれまであったか…?

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桜木紫乃 ラブレス

ミクタギです!

死の瞬間、

何を考えるんでしょうね?

これまでの

人生の来し方を思うのか?

全てを受け入れて

静かにその時を迎えるのか?

その人の生き様が表れるのでしょう。

そして脳裏に浮かぶのは

果たせなかった

思いなのかもしれません。

作者紹介

桜木紫乃

北海道釧路市 出身

2002年「雪虫」で

オール読物新人賞 受賞

2007年同作品を収録した

「氷平線」でデビュー

2012年 本作で

突然愛を伝えたくなる本賞 受賞

代表作

「ホテル ローヤル」

「硝子の葦」「ワン モア」

本編あらすじ

清水小夜子は、

幼馴染・杉山理恵から

母・杉山百合江の様子を

見に行くよう依頼を受ける。

小夜子の母・里実は百合江と

疎遠になって久しい。

百合江は生活保護を受けながら

古い集合住宅に暮らしていた。

部屋を訪ねると老人男性が表れる。

身なりはきちんとしていた。

中には今まさに、生涯を閉じようとする

百合江の姿があった。

胸に「杉山綾子」の位牌を抱いて。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

時は戦後まもなく、

百合江は元・炭鉱夫の父と

その母の間に長女として生まれた。

その妹・里実と3人の弟を持つ。

炭鉱夫を辞めた父が道東の標茶町に

酪農家として移住したのは

一旗揚げようという野心からだった。

しかし、大酒飲みの父は

最初は夢に燃えていたが

直ぐ働かなくなり生活は困窮する。

百合江は、中学を卒業すると

高校へ進学し、

いづれバスガイドになりたかった。

その夢は叶わず奉公に出される。

奉公先で仕送りしながら働く百合江は

ある日、街に来た歌芝居見物に出向く。

百合江は、歌が好きだった。

仕事仕事の毎日に

彼女の楽しみは歌うことだった。

歌芝居で百合江は「一条鶴子」と

運命的な出会いをする。

そして彼女は鶴子に

弟子にして欲しいと頼み込む。

その日を最後に彼女は

町を出る事となる。

この選択が百合江を

壮絶な人生へと導いてしまう。

本編見どころ

その後、百合江は歌芝居の一座で

各地を回ることになる。

そこでギター弾きの女形・

滝本宗太郎と出会う。

一座はいづれ解散になるが

百合江と宗太郎は

運命を共にすることになり

彼の子を宿すことになる。

名は「綾子」。

そこから百合江は数奇な運命を

辿り続ける。

いつも懸命に生きた彼女の生き様

これが焦点である。

宗太郎、その後現れる高樹、

彼女を支え続けるイシグロ。

やがて、最愛の「綾子」

まで失ってしまう。

百合江の行きつく先は?

読後感

この物語を

レビューするのは大変難しかった。

いくつもの

クライマックスがあるからだ。

いつも必死で生きてきた百合江の

あまりにも不運な人生に

どうしても引き込まれてしまう。

何が悪かったのか?

どう選択すれば彼女は救われたのか?

そもそも彼女は不幸だったのか?

この作名の「ラブレス」愛のない。

何故かわからなかった。

百合江自身、愛の深い人だと思う。

回りにいた人もそれなりに

愛はあったように思う。

私なりに解釈すると

心無い人たちの中で

必死に生きた百合江の愛は、

結局まわりを追い込んでしまう。

そのことが自分から愛を奪ってしまう。

そんな意味合いではないのか?

そう思わなければあまりに切ない

彼女の人生を

胸に落とし込むことが出来ない。

是非、本編を読んで欲しい。

あまり感情を入れたくないのですが

この作品に関しては敢えて言います。

ここには綴り切れない

名シーンがまだまだあります。

そして、「桜木紫乃」の真骨頂を

噛みしめて、それぞれの「ラブレス」を

追い求めて欲しい。

胸に抱いた位牌の真実と共に。

読者の感想

やたら衝撃が強かったこちら、10年ぶりくらいに再読。北海道の陰鬱な小屋から始まる60年もの物語は慟哭と哀しさで溢れていて、それぞれの歪な愛が複雑に絡まって引きつれてほつれて修復など到底不可能にしてしまう。浮草のように流れていく人生は生きることに意味など探さず、その場所も地位も一過性のものだという虚しさをカラリとやり過ごす。 この本の衝撃と気配は残っていたのにストーリーを忘れているところが多くて途中から一気読み。受ける印象も前とは違って、大きな塊を飲み下せず翌朝まで残す。

ふぅ♡ようやく読み終えた、なんて壮絶な人生なのだろう。舞台は昭和25年北海道・開拓小屋から。家族は極貧生活で心も荒み、そこで育ち流転していく百合江の生涯が行きつ戻りつ描かれる。重くて苦しく切なすぎるのに清々しさが残る。それは百合江が、どんなに翻弄されても結局は自分が受け入れたという覚悟と潔さを持っているから。そしていつも桜木作品の根底にある、人に対する愛おしさを存分に感じるから。里美にしたら歯痒くて惨めなようでも百合江は、ささやかだけどずっと愛を持ち続けた幸せな人生を生ききって、願いは叶ったのだと思う。

百合江の凄まじい生涯に圧倒され、杉山綾子の行末が気になり、時間も寝ることも忘れて読み耽る。不幸も幸せも長くは続かない。解説で小池真理子さんも述べてるが、人の一生を他人が判断することは出来ない。幸不幸のボーダーラインが何処にあると言うのか。北海道らしい大きさと重みを背景に、どんな境遇にあろうと生きる、生きることを重ねていく彼女たちの逞しさに深く感じ入る。読み手の肩の荷を下ろしてくれるような結末には、作者の筆力と度量を思い知らされた。

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