沼田まほかる ユリゴコロ
作者紹介
沼田まほかる
1948年 大阪府生まれ
元僧侶を経て作家へ
2004年「9月が永遠に続けば」で
第5回ホラーサスペンス大賞受賞
2012年 本作品「ユリゴコロ」で
第14回大藪春彦賞を受賞
代表作
「痺れる」 「猫鳴り」
「彼女がその名を知らない鳥たち」
本編あらすじ
亮介はドッグカフェに勤める若者である。
ある日将来を誓い合った
職場の女性・千絵が
失踪してしまう。
失意の中、今度は母・美沙子が
事故で亡くなってしまった。
災難続きに消沈しながら
遺品整理をしていると
父の書斎から「ユリゴコロ」
と書かれたノートが4冊発見される。
ノートには、
1~4の番号が書かれていた。
本能的に何かを感じた亮介は
1番のノートを開いてしまう。
そこにはある女性の幼少期からの
告白が記されていた。
その告白は、息をするかのように
人を殺すことに何の感情も沸かない
嘆きとも言える内容であった。
何度も躊躇しながら
ノートを読み進めるうち
その女性は母なのではないかと
疑い始める。
そんな中、失踪していた千絵の
消息がわかったと店長から連絡が入る。
同僚の中年女性・細谷が
千絵の実家がある岡山まで行き
見つけてくれたのである。
しかし、
そこで明らかになった真実は
実は千絵は結婚していた
ということだった。
本編見どころ
禁断のノートを
見てしまった亮介は、
最初は亡くなった母が
書いたものだと思う。
読み進めるうちにそこに疑問が生じる。
全てのノートを読み終えた後、
真実を確かめるため
父に真相を尋ねる。
そこで語られたものは
あまりにも虚しく悲しい過去だった。
ここから物語は
発見された千絵の真実に移っていく。
そして予想もしない展開に
あっと言わされてしまう。
母の真実、千絵の真実。
二つの真実が、
この物語の焦点です。
読後感
不思議な読後感でした。
ハッピーエンドと言って良いのか?
バッドエンドなのか?
読み終わったとき
すぐに判断出来なかった。
人を殺すことに
何の感情も持たない女が
1人の男性と知り合うことにより
少しずつ心を溶かしていく。
自分の過去に苦しみながら
最終的に愛することを知る。
しかし愛するものを守る手段が
やはり同じだとしたら
遣り切れない。
この章の冒頭で申し上げたことが
理解できるのではないか?
人を殺すことは悪である。
それは紛れもない事実だ。
しかしそれと感情とは
必ずしも一致しないという
不思議な読後感だった。
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