宮部みゆき 火車
作者紹介
宮部みゆき
東京生まれ
1987年「我らが隣人の犯罪」で
オール読物推理小説新人賞受賞
1989年「魔術はささやく」で
日本推理サスペンス賞受賞
1993年 本作「火車」で
山本周五郎賞を受賞
代表作
「模倣犯」「名もなき毒」「英雄の書」
本編あらすじ
警官として勤務中の怪我で
足を負傷してしまった本間俊介は、
休職中、自由にならない体に
苛立ちを覚え暮らしていた。
そんな中、親戚の栗坂和也が訪れる。
婚約者を探して欲しいという。
聞けば、新居の準備中
買い物でクレジットの
使用を試みたところ、
彼女が自己破産していることが
明らかになった。
問いただすと
”時間を貰いたい””と言い残し
その日から忽然と姿を消した。
彼女の名は、関根彰子。
和也の熱意に負け調査を開始するが
調べを進めるうち
いくつもの不審点が浮かんでくる。
いや、そもそも彼女は
本当に関根彰子なのか?
真実を追う中彼女の
凄まじい過去が明らかになる。
本編見どころ
本間が事件を追う中、
彼女のいくつもの
創られた過去が暴かれていく。
なぜ彼女は嘘を付き続けてきたのか?
彼女の目的は何だったのか?
彼女はどこへ行ってしまったのか?
数々の疑問が残る中
本間はとうとう
彼女の所在、
彼女の目的を知ることになる。
それは哀しくも、
許されざる行為であった。
ここが焦点である。
彼は既に依頼を受けて
始めたことすら忘れ、
彼女を知りたいという気持ちを
抑えられなくなる。
真実は明らかになるのか?
読後感
幸せになりたい。
誰もが思うことである。
その一心で生きることは
悪いことではない。
ただ、そのために全てを
嘘で塗り固めてしまったら
それはもう実体のない作り物。
今流行りの「テセウスの船」である。
彼女はそれでも後悔しないのか?
そう彼女に問いたい。
本当の幸せとは何なのか
もう一度考えて欲しい。
もし彼女に会えるならそう問いたい。
そんな思いがなんども
胸に去来しました。
読み進めるうち自分も ”本間”の
視点になっていることに気付く。
彼女を知りたい気持ちが
”本間”に同化して
いつしか物語に入り込んでいるような
そんな臨場感を味わえる作品です。
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