桜木紫乃 凍原 ネタバレなし!決して素顔を見せない女。悉く生きた痕跡を隠した訳は…。

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桜木紫乃 凍原

ミクタギです!

戦前戦後の樺太も

ソ連兵の暴挙により

多くの日本人が犠牲になった。

その戦火の中を

必死で生き抜いた人達がいる。

善悪ではない。

ただひたすら生きるために。

そのために多くのものを失い

それでも進み続けた

先人達が確かにいた。

作者紹介

桜木紫乃

北海道釧路市出身

2002年「雪虫」で

第82回オール読物新人賞受賞

2013年「ラブレス」で

第19回島清恋愛文学賞受賞

同年、「ホテルローヤル」で

第149回直木賞受賞

代表作

「起終点駅(ターミナル)」

「星々たち」「ブルース」

本編あらすじ

登場人物

松崎比呂・・・釧路方面本部刑事第1課

片桐周平・・・比呂の先輩刑事

水谷貢・・・比呂の弟、10歳で死亡

杉村純・・・貢の同級生

鈴木洋介・・・釧路湿原で死亡

鈴木加代・・・洋介の姉

鈴木ゆり・・・洋介、加代の母 死亡

鈴木克子・・・ゆりの母

長部おさべキク・・・克子と樺太から帰国

釧路方面本部シリーズ。

氷の轍の前作。

松崎比呂は30歳。

札幌での勤務を経て

彼女の故郷である

釧路方面本部に配属された。

彼女は3歳年下の

弟・貢を10歳で亡くしている。

釧路湿原に遊びに行ったきり

二度と帰ることはなかった。

行方不明として捜査されたが

担当したのが

職場の先輩・片桐だった。

彼は比呂や比呂の両親、

一緒に遊んでいた杉村純や

その母親に熱心に捜査を行った。

しかしその後も

見つかることはなかった。

それから17年の月日が流れ

片桐と比呂は同僚となった。

片桐は杉村母子のその後も気に掛け

母の死により店を引き継いだ

純との交流も続けている。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

そんな中、事件は起こる。

釧路湿原で死体が発見された。

貢がいなくなった湿原で。

因縁めいたものを感じながら

比呂は片桐と現場に向かう。

被害者は鈴木洋介34歳。

札幌の中古車販売業者。

釧路には納品の

仕事で来ていたようだ。

しかし調べを進めるうち

彼は誰かを

探していたらしいことが分かる。

青い目をした自分のルーツを。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

長部キクは終戦直前

樺太で爆撃を受ける。

そこで母と妹を失い

近くにいた

幼馴染の男と南へ逃げる。

最南端から

船で北海道に渡るためだ。

ソ連兵に見つかる

危険を感じながら二人は逃げる。

途中案の定ソ連兵に発見された。

しかし幸い相手は一人だった。

しかも脱走兵。

敵意は無いことを示しながら

一緒に南を目指した。

途中キクはソ連兵に抱かれた。

それに逆上した

幼馴染は撃たれた。

悲しくはなかった。

キクはソ連兵に惹かれた。

ソ連兵に港まで

行ってどうするか尋ねた。

答えない彼に女の影を感じた

キクは彼を撃ち殺してしまう。

本編見どころ

北海道に渡る船に

何とか乗れたキクは

そこで年の離れた男女に会う。

男の方から女に

北海道の知人宅まで

付き添って欲しいと依頼される。

彼女は自分と

それほど年は変わらない。

当てもないしと引き受けた。

彼女の名は鈴木克子。

ここで被害者鈴木洋介と繋がった。

ここからが焦点だが

鈴木克子の親戚を頼った二人は

その家が所有する

小屋に住まわせてもらう。

そこで生計を立てるが

キクの妊娠が発覚する。

産む気もなく

堕胎を期待するキクに克子は

産むように説得する。

しかし出産後キクは出ていく。

子供を置いて。

気付き呼び止めた

克子はキクに叫ぶ。

「私が大事に育てる、

せめて名前を付けてあげて!」

キクは、「ゆり」と呟いた。

読後感

キクはその後どうしたのか?

子を捨てて歩んだ

彼女の人生は幸せだったのか?

読むうちに明らかになります。

ここでは語り切れない真実が

事件へと繋がっていきます。

青い目だった被害者。

戦争がもたらしたであろう悲劇は

遥か時を超えて現代に波紋を残す。

鈴木洋介はただ

青い目の自分を知りたかった。

否定し続けた

己の人生をやり直したかった。

そんな思いで

ルーツを探ったのではないか?

そう思うと切なくなります。

誰もが自分は何者なのか知りたい。

その先に待っているのが

どんな真実か

深く考えることもなく。

読者の感想

ずっと前に読んだかもしれない。著者独特の釧路をメインにした北の国の今回もやはりやるせない話。車のセールスマンの死と女刑事の弟の死。関係ないといえばないけど湿原の工房と先輩刑事だけがちょっとした接点かな。谷地眼という変わった名前だけに惹かれて読んだけど、動機に関してはすっきりはしなかった。「間違いではないが正解でもない」など、いくつかの名言は残った。

著者の名前はいまや知れ渡り、道東を舞台にした哀しみややりきれなさ、様々な情念を描き出す名手といってよいだろう。本書はこれもまた個人的体験としか言えないものを残すので、うまく語れない。謎解きを楽しむ余裕があまりないのに、表紙見開きの地図からして動悸がしてくる。この土地で育ったわけでもなく、深く知ってるわけでもないがさまざまな縁がつながる。ミステリーとして読みたかった訳ではないので、風景心情そして歴史。チョルトという言葉は放り出すように明かされなかったが、悪魔でいいのだろうかロシア語で。

読み出したら止められないので 気をつけなければと思っているのに、またやってしまった。夜更かし前半で散らばったピースが後半で、どんどんはまっていく感じが気持ち良い!しばし陶酔。

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