宮部みゆき R.P.G.
本編あらすじ
登場人物
武上悦郎・・・警視庁捜査一課デスク
石津ちか子・・・杉並署所属
中本房夫・・・警視庁捜査一課デスク
所田良介・・・建築現場で死亡
今井直子・・・カラオケボックスで死亡
所田春恵・・・良介の妻
所田一美・・・良介の娘
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ネット上の登場人物
お父さん・・・所田良介
お母さん・・・三田佳恵
カズミ・・・加原律子
ミノル・・・北条稔
渋谷のカラオケボックスで
女性の絞殺体が発見された。
今井直子、21歳。
このカラオケボックスの
アルバイト店員だ。
数日後、
今度は杉並区の建設現場から
男性の他殺体が発見される。
所田良介、48歳。
オリオンフーズの社員である。
調べを進める中
二人には接点があった。
所田の勤めるオリオンフーズで
モニター募集の
アルバイトをしていたのが
今井直子だった。
所田良介は人当たりが良く
若い女性にも人気があった。
今井直子とも
親密な関係だったらしい。
警察サイドは、
所田良介の女性関係に絞り
捜査を進めた。
そこで
”A子” が捜査線上に浮上した。
元々、
良介に好意を持ち交際していたが、
そこへ今井直子が割り込み
横取りしたような形だ。
A子と今井直子は直接会い
罵りあっていたという証言もある。
ただ決定的な証拠がなく
マスコミも本名は明かせない。
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そんな中、事件を違う視点から
見ていた男がいた。
中本房夫。
警視庁捜査一課デスクとして
最年長のベテランだ。
所田良介の所持する
パソコンに注目した。
ネット掲示板の中で展開されていた
疑似家族の存在を発見したのだ。
調べを進め核心に近づいた時
病に倒れてしまう。
先輩である中本の意思を受け継ぎ
武上悦郎は取調室に向かう。
最初の相手はネット上の”ミノル”。
北条稔だ。
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一方、取調室の面通しのため
所田一美が出頭した。
母・春恵と共に。
一美は良介の死亡後
身辺に異常を訴え
警察の保護を受けている。
ネット上の疑似家族の話を聞き
父・良介が自宅付近で不審人物と
一緒にいるのを目撃したと言う。
一美は疑似家族が
父を殺したに違いないと主張。
今回の面通しに繋がった。
一美を担当する石津ちか子と共に
取調室の隣室に入った。
本編見どころ
取調室ではまず
北条稔が武上悦郎と向かい合う。
これは任意で
取り調べではないことを前置き
話は始まった。
カズミである加原律子。
お母さんである三田佳恵。
順に現れる。
隣室で所田一美が見つめる。
父が作った疑似家族。
しかも娘は自分と同じ名前。
それぞれ自分勝手な供述を始める。
徐々に所田一美が興奮し始める。
隣で石津ちか子が静かに見つめる。
この疑似家族が
事件にどのように関わるか?
物語の焦点は哀しい結末を迎える。
読後感
所田良介は女性関係が派手だった。
妻の春恵は半ばそれを諦め
飼い慣らされていた。
娘の一美はそれを
どのように見ていたのか?
疑似家族という形で
ネット上に居場所を求めた良介と
家庭で現実を生きる母娘。
既に家族として体を成して
いなかったように思う。
疑似家族に集まった3人も同様。
良介との間に理想の
父娘を求めた加原律子。
同じく心の隙間を
埋めたかった北条稔。
妻として母として
生きられない自分を
救って貰えることを
期待した三田佳恵。
みんなそれぞれに孤独だった。
まさに現代社会の構図である。
表面上は幸せに見えても
中は張りぼて。
そんなものに何の価値があるのか?
それでも張りぼてに縋るしかない。
それに真っ向から立ち向かうことを
誰が否定出来るのか?
そこにも哀しい現実が待っている。
作者紹介
宮部みゆき
東京生まれ
1987年「我らが隣人の犯罪」で
オール読物推理小説新人賞受賞
1989年「魔術はささやく」で
日本推理サスペンス賞受賞
1993年 本作「火車」で
山本周五郎賞を受賞
代表作
「模倣犯」「名もなき毒」「英雄の書」
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