ツイッター小説 140字の風景(アラカルト)

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140字の風景(アラカルト)⑦

秘密

祖父は優しい人だった。

連れ合いを早くに亡くし

一人この屋敷に住み続けた。

そして孫である私を

特に可愛がってくれた。

しかし私は知っていた。

深夜、地下室に降りる祖父

そこで暫し談笑を始める。

白骨化した祖母と。

そしてその屍を

私の名で呼んでいることを。

無実

『お前はやってない。俺は信じてる。』

拘置所の厚い仕切り越しに

俺は語りかけた。

「信じてくれるのか?」

『当たり前じゃないか。』

「でもこのままじゃ俺は…。」

『大丈夫!俺が何とか…。』

“ そろそろ時間だ!”

彼は刑務官に促され出て行く。

…悪いな。俺の代わりに。

部下

地下鉄は会社の

最寄り駅で停車した。

地上に向け階段を上がると

後方から声が掛かる。

「おはようございます…」

部下の芹沢だ。

正直、少し薄気味悪い。

『今日もよろしく頼むよ!』

蒼白い顔で微かに笑った。

背筋が寒くなる。

そう言えば最近

悪寒を覚えることが増えた。

雷夜

閃光が走った。断続的に続く雷。

一人の夜は不安だ。

インターフォンが鳴る。

モニターを確認すると

男性が立っている。

見覚えはない。

『どちら様ですか?』

「ご注文のお品をお届けに。」

『え?間違いでは?」

彼は言った。

「あれ?おかしいな?」

夫の生首を抱えて。

怨女

遠くで笑い声。

微睡みの中、聞き覚えが。

懐かしい。でも何故?

断続的にそれは続いた。

疲れているのだろうか?

「眠れないの?」

背後から妻が私を、まさぐる。

不覚にもそれに反応する。

向き直り抱き締めようとした

その顔は……あの女だった。

リビングの笑い声は続く。

道連れ

“ねえ、 私の事好き? ”

何度も繰り返す唇を貪る。

唾液を交換し合い

最後のひと突きを放った後

女はゆっくり崩れ落ちた。

運転席に彼女を残し

車ごと海に葬る。

即効性で意外と早く効いた。

もうこれで心配はない。

自分の車でその場を後にする。

後部座席に、女を乗せたまま。

魔性

男は今夜3度目の欲望を

女の中に吐き出した。

年甲斐もなく街中で

誘われるままに。

女は素晴らしかった。

欲情を唆る流し目

しっとりとした柔肌

そして男を虜にする性技。

男は朝まで女に溺れた。

重なりあい絡み合う2人。

天井の鏡では男の下で

白髪の老女が笑っている。

想い人

出会った場所で逢いましょう。

この時、気付くべきだった。

現れたあの娘は

当時と同じ装いで微笑む。

それから僕らは、

想い出を辿る様に

記憶を重ね合わせた。

すれ違う思いに触れる事なく。

夢と現を彷徨い、夜が明ける。

交わしたグラスの向こうに

彼女はもう居ない。

亡き友

日曜日の午後。

あまりの陽気に微睡んでいると

右脇に温もりを感じた。

幸せな気持ちに包まれて

再び眠りに落ちていく。

目覚めると温もりは冷め

その主は居なかった。

リビングに向かうと

主は窓外を見詰めている。

隣に座り同じ景色を見る。

君は何を見てるのかな……。

迷い猫

年末は寒波が襲来するらしい。

今夜はそれを思わせる天気。

地下鉄の駅を出て

家路に向かう。

霰まじりの雪が落ちてきた。

頭や顔に時折痛みを感じる。

何処からともなく一匹の子猫。

雪と同じ色で見逃す所だった。

か細く鳴き声をあげる。

そっと抱き上げ

ダウンの懐に入れた。

幼稚園

幼稚園での風景。

「かえでちゃん!これ貸して?」

『いいよ。』

「このおもちゃ楽しいね。」

『そうだね。』

「あ!こっちのおもちゃも楽しそう!」

『まあね。』

「みさとちゃん!それ面白い?」

「ゆみちゃん!これ楽しいよ!」

『女もオモチャもとっかえひっかえね。』

令和の子供たち。

電話

あと少しで日付が

変わろうとした時

スマホが震えた。

「もしもし。」

『・・・・ 。』

しばらく沈黙が続く。

切ろうとした時、

『あの人と別れた。』

「・・・そうか。」

『それだけ。』

「ああ。」

そっとスマホを置いた。

茶番も甚だしい。

それでもまた繰り返す。

おそらく。

母の想い

貴方が私の前に現れて

20年の時が過ぎた。

最初に会った時

貴方はいつも泣いていた。

何度慰めても直ぐ泣いて。

でも貴方は少しずつ

強さを覚えていった。

今では私が慰められるくらい

本当に成長した。

貴方がどこで何をしていても

私は貴方の味方です。

大切な貴方へ。

痛恨

今日彼女に告白する。

思えば長い春だった

随分待たせてしまった。

やはり場所は思い出の地

あのレストラン。

一番夕日が綺麗な

時間帯を予約済みだ。

そろそろ時間

彼女もやってきた。

「結婚して欲しい。」

「思い出の場所で伝えたかった。」

『私、ここ初めてだけど。』

電話

あと少しで日付が

変わろうとした時

スマホが震えた。

「もしもし。」

『・・・・ 。』

しばらく沈黙が続く。

切ろうとした時、

『あの人と別れた。』

「・・・そうか。」

『それだけ。』

「ああ。」

そっとスマホを置いた。

茶番も甚だしい。

それでもまた繰り返す。

おそらく。

※ 思わず迷い込んだ世界……。

      ↓

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