遠田潤子 冬雷 ネタバレなし!施設育ちから一転、鷹匠の後継者に。将来を約束されたはずが…。

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遠田潤子 冬雷

本編あらすじ

登場人物

夏目代助・・・施設出身の鷹匠

加賀美真琴・・・鷹櫛神社、巫女

加賀美倫次・・・鷹櫛神社、宮司

千田雄一郎・・・冬雷閣当主。代助の養父

三森愛美・・・酒店の次女

三森龍・・・愛美の兄。代助、真琴の同級生

冬雷閣当主は

代々鷹匠として街を守ってきた。

鷹匠は日々鷹の世話をし

鷹と心を通わせ

鷹を阿吽の呼吸で飛び立たせる。

伝説の鷹・緑丸を

鷹櫛神社巫女の舞と共に。

街の祭りなど

記念すべき日に力を合わせて

この催しを行ってきた。

千田家と加賀美家は

古くからこの重責を担ってきた。

加賀美家の巫女であった

真琴の母は先日亡くなった。

そのため真琴が跡を継ぐ。

しかし千田家には跡取りがいない。

そこで施設から貰われてきたのが

夏目代助のちの千田代助、

11歳の時。

代助と真琴は初めてあった瞬間に

お互いを運命の人と感じた。

街の人たちが腫れ物に触るように

二人を扱っても力を合わせ

頑張ってきた。

しかし運命は残酷なものである。

代助、真琴が15歳になった頃。

雄一郎夫婦に子供が出来る。

あれほど代助に期待を

賭けてきた二人が

男の子が出来ると豹変した。

高校に入り代助が17歳に

なる頃にはいづれ出ていくように

雄一郎から言い渡された。

2歳となった後継者・翔一郎の

邪魔になるからと。

千田家のため

精一杯勤めてきた代助は

絶望を味わう。

しかしまだ幼く

自分を慕う翔一郎を可愛く思う心は

代助を少しだけ救ってくれた。

朔一郎を支えよう。

そう決意した。

やがて時は経ち

代助17歳の時。

父・雄一郎から後継者の教育を

され続けた翔一郎は

ある日、代助に

緑丸を飛ばせてみたいと言う。

まだ幼く無理だと告げると

僕の鷹なのに、と返される。

分かっていたことだが

つい感情的になり

翔一郎を家の前に残し

その場を去った。

その直後、翔一郎が

行方不明になったのである。

血眼になって捜す

千田家・加賀美家。

そして街の人たち。

やがて人々の心は

代助に疑いの目を向け始める。

いつも一生懸命やってきた。

何故誰も認めてくれないのか?

絶望の中、

代助は街を出る事を決める。

その夜、真琴と結ばれた。

そして一緒に

この街を出ようと告げる。

真琴は頷いた。

しかし翌朝、真琴が駅にこない。

一緒には行けないと連絡が入った。

本編見どころ

真琴との絆だけが

代助を支えてきた。

その真琴にも裏切られた。

自暴自棄になり

この街を出ようとする代助は

ひとり列車に飛び乗る。

見慣れた女が見えた。

三森愛美だった。

彼女はずっと代助に思いを寄せる。

真琴を失ったことを

なぜか知っている彼女は

自分が代助を支える

一緒に連れていってと囁く。

全くその気のない代助は

その後、愛美を避け続ける。

そしてある日

愛美が自殺してしまった。

読後感

養護施設時代から

幼い子の面倒を見て

誰よりも勉強も頑張り

一生懸命認められようとした。

しかしいつも最後には

彼の思いとは反対の方向に

人生が暗転してしまう。

確かなものを手に入れた

と思ったらすり抜けていく。

そんな代助が

何とか救われて欲しい。

読み進めるうちに

そう思わざるを得ない。

そんな気持ちにさせられた。

しかしことごとく

裏目に出てしまう人生は

誰の元にも起こりうる

ことだろうとも思う。

結末は皆さんで見届けて欲しい。

代助はこの後

ある理由で街に戻ることになる。

その後の彼を是非見て欲しい。

人の人生とは何か?

人の幸せとは何か?

人の宿命とは何か?

深く心に刻んで貰いたい。

作者紹介

遠田潤子

大阪府生まれ

2009年「月桃夜」で

第21回日本

ファンタジーノベル大賞 受賞

2012年「アンチェルの蝶」で

第15回大藪春彦賞 候補

2017年「冬雷」で

第1回未来屋小説大賞 受賞

代表作

「カラヴィンカ」「蓮の数式」

「ドライブインまほろば」

読者の感想

遠田さん8冊目。2017年。親を知らず、施設から旧家の養子になった代助。後継者として鷹匠の訓練にも励んだが、実子が生まれ、更には不幸が重なり、家を出ることになった。年月が経ち、葬儀のために元の養子先を訪れた際、いろいろな隠されたことが明らかになる。横溝正史ばりに、しがらみ、風習など、どうしてそこまでと思える人々の固執ぶりが理解できなかった。そのドロドロさが癖になり、一気読みだった。

情景描写の綺麗さと人間関係のドロドロ具合が相変わらずと言うかえぐい。いくら田舎と言えどもそうはならんだろと言う感じで話の展開も何となく読めてしまって残念。唯一の救いはラストの主人公に希望があることだけど冷静に考えてどうして主人公がこの後出て行かないと思えるのかと思わずにいられない。散々陰でぎゃあぎゃあ言った挙句人殺し呼ばわりまでして育ての親も加担してと頭が湧いてようが今まで暮らしてた時間は何だったんだと殴られても仕方ないしまぁ、無理よね。幸せになれる未来が想像つかない。

伝統を重んじ因習に囚われ、閉鎖的な海辺の田舎町が舞台。そして迷信の祟りを恐れ、旧家の鷹匠と鷹櫛神社の巫女は結ばれてはいけないという定めがある。この物語はミステリーというより、鷹匠と巫女の恋愛悲話であり、呪縛に囚われた町の人々のホラー物語のような気がした…。閉塞感で息苦しくなる一方で、鷹匠と巫女という儚い設定や冬雷が起こる厳しい冬の描写がとても美しかった。

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『冬雷』|感想・レビュー - 読書メーター
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