辻村深月 朝が来る ここがポイント!
序盤 抑えるべきポイント
相関図
本編あらすじ
栗原佐都子は、夫・清和、息子・朝斗との生活に幸せを噛み締めていた。タワーマンションの上層階に住み、高収入の夫を持ち、息子の朝斗は幼稚園に通う可愛い盛り。何不自由ない生活に恐ろしささえ感じていた。
こんなに幸せで良いのだろうか?
一つだけ気掛かりなことは、時折掛かって来る無言電話。何も言わず、向こうから切ってしまう。しかし今の幸せに比べると、取るに足らない事。いつの間にか忘れていった。
ある日、幼稚園から電話がある。朝斗がトラブルにあったという。慌てて幼稚園に向かった。
園長と担任の先生によると、タワーマンションでも一緒の仲の良い友達が、滑り台から落ちて足を捻挫してしまった。その子の話では、朝斗に押されたと言う。園側で確認したがはっきりした証拠はない。何となく朝斗の仕業のような空気になっていた。
朝斗はそんな事をする子供ではない!
しかし佐都子には、どうしても朝斗がやったとは思えない。本人に確認すると、絶対にやっていないと言った。最後まで我が子を信じることに決めた。
怪我をした子供の母親とは日頃から仲が良いが、佐都子が非を認めないので険悪になってしまう。もやもやした状態が続いたが、最終的に相手の子供が嘘を言っていた事を認め、事態は収拾した。
あの子を信じて良かった……。
息子を信じて良かった。朝斗がやはり思った通りの子供で佐都子は嬉しかった。これで何の心配もいらない。そう思った時、また、あの無言電話が掛かって来たのだ。
今日という今日は、何か言ってやる。覚悟を決めて電話を取ると、「息子を、返してください。」初めて相手が話した。しかしその内容は、佐都子を過去へと誘う悪魔の言葉だった。
まさかあの人が……、いやそんな筈は無い。
ネタバレなしで本編を楽しむ
ここから先が物語の中心となり、全ての謎はこの後を読まないと全く分かりません。冒頭の抑えるべきポイントで紹介した養子縁組の件が、最後までこの物語を支配します。その上で、本編の楽しむポイントは、
・栗原夫妻が養子縁組に辿り着くまでの過程
・無言電話の正体は一体誰なのか?
・片倉ひかりが朝斗を手放す事になった理由
・ベビーバトンの役割と現在
この辺りでしょうか?
流れとしては、養子縁組までの夫婦の葛藤がこの後、描かれていきます。そして養子縁組の経緯、その後、片倉ひかりについて、かなり長く描写されています。
読後感
ラストの20ページに全てが集約されていた。そんな印象を覚えました。
冒頭の幼稚園での出来事が親子の絆をより引き立たせ、その後の展開に重みを加えました。読み進める内に、何故?何故?が続き、一つ一つの疑問はある程度予測が付くが、点と点が繋がって行かない。スッキリしない状態でのラスト20ページは、ホッとさせるものがありました。
その上で、もうひとつ山が欲しかった。切々と語り続けた片倉ひかりを、昇華させるまでは行かなかったのが、個人的には残念でした。ただ全体を通して読み易かった。読ませる技術は流石です。
展開としては在り来たりですが、作者の優しさが垣間見える。最後に安心させてくれる所は、多くの人々の勇気に繋がるでしょう。
読者の感想
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