いつか、虹の向こうへ ネタバレなし(伊岡瞬)
序盤抑えるべきポイント
訳アリの元刑事・尾木遼平が今夜も安酒で酔っぱらう。
気持ち良く歩く帰り道、一人の若い娘・高瀬早希に遭遇。「ホテルに泊まらないか?」と誘いを受ける。話を聴くが要領を得ない。そのまま別れた。
その直後、チンピラ風の3人組に絡まれてしまう。刑事時代に得た護身術でなぎ倒すも酔いが最高潮へ。記憶はそこで途絶えた。
目覚めると自宅に居た。これまた訳アリの同居人たちが口々に言う。インテリ風の優男・石渡。元大学生・ジュンペイ。元主婦の村下恭子。また同居人が増えたのかと。昨夜泥だらけで帰って来たけど何かあったのか?
着替えさせるのが大変だった。あの娘さんは誰なのか?
娘さん?昨夜の記憶を辿る。見知らぬ若い女にあった。チンピラに絡まれ乱闘した。そして……、女が戻ってきて警察を呼んだ……フリをして助けてくれた。
そこから記憶が無い。あの後、泥だらけの尾木を嫌がる運転手に頼み込んでタクシーに乗せ、この家まで連れてきた。そしてそのまま彼女もこの家に泊まったらしい。
事情は分かった。いろいろ世話になった。早希は暫くここに置いて欲しいと言う。
しかしこれ以上、訳アリの人間を増やす余裕は無い。申し訳ないが出て行ってもらうしかない。
今日1日の約束でこの家にいる事を許した。その日仕事を終えて帰ると食卓を囲む団欒の声が。いつもほとんど会話せず、ひっそりとした夕食が早希の存在によって和んでいる。
このまま早希にここに居て欲しい。みんなの総意だった。
そんな生活が続いたある日、出かけて来ると言ったまま早希がいなくなった。みんなも落胆の色を隠せない。
諦めかけた頃、夜勤を終え帰宅した尾木が訪問者の襲撃を受ける。「早希は何処だ!」不意を突かれたのもあるが強敵の若者だった。素人ではない。
結局、家を荒らし男は去っていった。早希の彼氏か?彼女は何者なのか?
次の日、男の死体が発見された。昨日、早希を訪ねてきたあの男だった。
相関図
本編あらすじ
尾木遼平は、元刑事である。今は警備会社で昼となく夜となく働いている。
彼は妻とも離婚している。この家も間もなく財産分与と慰謝料で人手に渡る。そんな家に奇妙な同居人たちがいる。
石渡久則。柳原潤。村下恭子。尾木と同様に訳アリの彼らにとってここは静かに暮らせる場所。
そんな所に迷い込んだ太陽のような存在の高瀬早希。
彼女の存在は、他の同居人の凍り付いた心を少しずつ融かしていった。
尾木との出会いも運命だったのか?裏切りと絶望、諦め。刑事を辞めてから冷めた気持ちで生きてきた彼の心も、何かを感じ取ったのかもしれない。
そんな早希がある日消えてしまい、彼女を訪ねて男がやってきた。血眼になって探している。
彼女は何者か?そして翌日、男は死体で発見された。陸橋から転落したらしい。死亡推定時刻の直前に早希と一緒にいた事が目撃されている。
彼女がやったのか?尾木の元にも、かつての同僚たちが事情聴取にやってきた。
警察同様に早希を探す者がいた。死体で発見された男・久保裕也は広域暴力団会長の甥。メンツを守る為、警察より先に早希を探し出し落とし前を付けるのが彼らの目的だ。
早希と尾木の関係を探り出した彼らは尾木を襲撃、彼に早希の捜索を命じた。しかし彼は早希が犯人ではないと考えていた。
ここから図らずも、尾木の刑事のような捜索が開始されたのである。
ネタバレなしで本編を楽しむ
明け渡し間近の家に集まった訳アリ人生の4人。
そこに迷い込んだ高瀬早希。彼らの人生は何処でどう狂ったのか?
それぞれの過去が徐々に明かされる。
そして早希の巻き起こした事件は本人も含め、大きな波紋を広げた。
警察、暴力団、それらを取り巻く人間関係。
多くの人達を巻き込み、様々な悪意・後悔、そして信頼。
その先に彼らを待ち受ける者は……?
土砂降りの雨に打たれてずぶ濡れになった雨上がり、彼らの視線の向こうに虹は見えたのか?
読者の感想
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