遠田潤子 オブリヴィオン ネタバレなし!妻を殺した十字架を背負い生き続ける男は…。

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遠田潤子 オブリヴィオン

ミクタギです!

最愛の人を亡した思い。

それは経験した人でないと

分からないことかもしれません。

しかしそれが

自分の手による

ものだったとしたら。

もう想像も出来ません。

ある意味

生きる屍といえるのではないか?

作者紹介

遠田潤子

大阪府生まれ

2009年「月桃夜」で

第21回日本

ファンタジーノベル大賞 受賞

2012年「アンチェルの蝶」で

第15回大藪春彦賞 候補

2017年「冬雷」で

第1回未来屋小説大賞 受賞

代表作

「カラヴィンカ」「蓮の数式」

「ドライブインまほろば」

本編あらすじ

吉川森二しんじ・・・妻を殺害し服役。

長峰唯・・・森二の妻。死亡。

長峰圭介・・・唯の兄。

吉川光一・・・ 森二 の兄。

佐藤沙羅・・・ 森二 の隣人。

吉川冬香・・・ 森二 と唯の娘。

吉川森二は

妻・唯を殺害し服役していた。

激しい後悔と

絶望の日々を過ごし

仮釈放された。

二人の男が迎える。

実兄・光一と義兄・圭介だ。

光一は以前の生活へ誘い、

圭介は唯殺害を

糾弾し続けるためだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

森二には特別な能力があった。

競艇場で

勝つ艇が分かるというものだ。

頭の中に下りてくる感じだ。

この能力が

父を狂わせ死に追いやった。

少なくとも

兄・光一はそう思い森二を憎む。

そしてその能力を使わせ

堅気ではない生活に

森二を引きずり込んでいた。

そんな自暴自棄の生活を

変えてくれたのは長峰兄妹だ。

不良にしか見えない17歳を

二人は受け入れ勉強を教えた。

不可能だと思っていた更生を

果たすことが出来た。

光一と取り巻きたちとの

縁を切り、大学へ進み、

その後不動産鑑定士として

働くこともできた。

そして唯と結婚し冬香が生まれた。

全てが順調な矢先

娘・冬香が

実子ではないことが判明。

真実を問い詰める際の

不慮の事故であった。

しかし森二は事実関係を争わず

過失致死で収監される。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

出所後、

生活を送るアパートで

心震わす旋律を聞いた。

隣室に暮らすのは

行方不明の日本人父と

アルゼンチン人の母を持つ

沙羅という18歳の少女だ。

聞こえてくる音色はバンドネオン。

アルゼンチンの楽器。

曲は「オブリヴィオン」。

森二の心を癒してくれる。

しかし自分は許されてはいけない。

一生償い続けなければならない。

そんな思いと裏腹な旋律に

戸惑いを隠せない。

やがて沙羅と距離が近づく中

唯の真実を追いかけるようになる。

辿り着いた先には

森二の特殊能力が関係していた。

本編見どころ

森二を

憎みながら情を感じる光一。

同じく森二を憎みながら

自らの秘密に苦悩する圭介。

そして森二の特殊能力。

このあたりが焦点になる。

これらを紐解くと

唯の死に繋がっていく。

血の繋がらない冬香を

それでも愛し守り続ける森二に

回りは心を溶かしていく。

読後感

「オブリヴィオン」

忘却、赦しの意味。

唯との日々。

彼にとって安らぎだった。

勉強で正解すると

桜のハンコを押してくれた。

よく出来ました。

自分を無条件で

受け入れてくれた人。

そんな彼女を殺めてしまった。

どんなに悔やんでも

彼女は戻っては来ない。

永遠に。

自分の特殊能力に狂った父は

自分を気持ち悪いと言った。

冬香の父を圭介と疑う森二を

気持ち悪いと言った唯。

意味は違ったが

重なってしまった悲しい偶然が

悲劇を起こしてしまった。

唯を殺めてしまった自分を

森二は忘れることも

許すことも出来ないだろう。

しかし全てが明らかになり

二人が歩んて来た

道のりを振り返るとき

そこには紛れもない愛があった。

それを胸に生きていくことが

彼にとっての「オブリヴィオン」

である気がして仕方ない。

悲しく切なくはあるが、、、。

読者の感想

僕は今、幸せだ。つくづく当たり前の日常に喜びを噛み締める。恵まれた家庭と悲劇の家族、そこに至る過程も紙一重なら妬みや蔑みから被る事態も表裏一体。ようやく幸せという光を手にした矢先に、不穏な空気のまま何と悲しい現実を突きつけられるのか。たった一つの言葉の真意の取り違いから至る錯綜は何とも酷。殺人・ヤクザ者・ギャンブル依存・風俗、連なるワードから思い浮かぶのは全て暗闇。それでも皆もがき苦しみながらも生きている…あらためて幸せ感じる現在に感謝しつつ「たいへんよくできました」を分け合いながら寄り添っていきたい。

物悲しい旋律は夕焼けの太陽のように真っ赤に燃える後悔を、蛇腹が生み出す空気の流れはもう戻らないあの日々を嘆くため息に聞こえた。人を想う強い気持ちが希望を持たせてくれることを知り、その灯に導かれるように「いつか」「いまさら」を捨てて手に入れた幸せ。知りたくなかった真実を知った時、初めて理解した、犯した罪とサクラのハンコを押してくれる人がいない世界を。オブリヴィオン。忘れない為に、全てを抱えて生きる決意を胸にもう一度やり直す。いつかお父さんと呼んでくれる大切な存在と見上げる空はきっと、優しい青をしているはずだ。

冒頭、出所のシーンで読者は早々に悟ることになる。これは絶望に向かう物語ではなく、すでに事実として動かしがたい絶望があり、それを取り巻く人々の話なのだということを。回避し得ない、ゆるぐことのない過去。回想で希望が語られれば語られるほど、現在の苦しみがより濃く浮かび上がってくる。散り散りになった明るいもの、綺麗なものの欠片をひとつずつ拾い集めて、森二が自分に未来を“赦す”ことが出来るようになるラストには、圧倒的な感動がある。読了後、本を閉じて目に入るのは、十三峠から見渡せる美しくも切ない大阪の風景だ。

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『オブリヴィオン』|感想・レビュー - 読書メーター
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