水生大海 冷たい手 ネタバレなし!被害者なのに何故?目立たぬようにひっそり生きて来たのに…。

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水生大海 冷たい手

ミクタギです!

被害者は

どこまで傷つけられるのか?

加害者から身勝手な理由で。

被害者として社会の好奇の眼で。

関係者から逆恨みの報復で。

不運というにはあまりにも

理不尽な人生を

もう諦めるしかないのか? 

作者紹介

水生大海みずきひろみ

三重県生まれ

1995年

秋田書店より漫画家デビュー

2005年

第1回チュンソフト小説大賞

銅賞受賞

2008年「少女たちの羅針盤」

第1回ばらのまち福山ミステリー

文学新人賞優秀作受賞でデビュー

代表作

「かいぶつのまち」

「だからあなたは殺される」

「ひよっこ社労士のヒナコ」

本編あらすじ

登場人物

国枝朱里・・・ショップ店員

秋葉典子・・・保育士

眞沢まさわ憲吾・・・警視庁巡査部長

田中幸子ゆきこ・・・憲吾の恋人

細川・・・ショップ店長

室町・・・典子の婚約者

浅賀・・・近隣パン屋店員

国枝朱里は31歳。

ショップ店員として働き

日々を目立たない

ように過ごしていた。

そんな中

友人・秋葉典子が職場に現れる。

聞けば結婚するという。

相手は大手

アパレルメーカー社長の室町。

マスコミにも注目される存在だ。

しかし元彼女でモデルの女が

マスコミに騒ぎ立て

典子が室町を

奪ったと主張したのだ。

名前こそ明らかにされなかったが

世間の注目を集め

勤めていた保育園でも

厳戒態勢がとられた。

そんな典子を朱里は心配し

何か出来ることはないかと

問いかける。

だが典子は

頻繁に会わない方が良い。

20年前のことを

嗅ぎつけられるかもしれない。

朱里に迷惑を掛けたくない。

そうあの事が明らかになれば

また平穏な日々が奪われてしまう。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

警視庁刑事の眞沢は28歳。

一つ年上のゆきこと交際している。

お互いに仕事が忙しく

会えないことも多いが

それなりに上手くいっている。

ゆきこが出張になり

しばらく会えなくなった頃

女性の頸部圧迫死体が発見される。

現場に急行し調べを進める。

被害者の名前は秋葉典子だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

その後典子は室町との

付き合いを解消し身を潜める。

朱里からの連絡にも応答しない。

心配し保育園も尋ねるが会えない。

そんな中、典子が転落事故を起こす。

病院からの連絡に駆け付け

典子を心配し家まで送る。

その日は一緒に居ようとする朱里に

やはり典子は

20年前のことを理由に拒否する。

その日が典子との

最後になってしまった。

なぜ典子は死んだのか?

20年前に何があったのか?

本編見どころ

朱里は目立たぬように

しかし半ば

諦めた人生を送っていた。

ショップでの仕事も

店長・細川には否定され

同僚とも上手くやれていない。

近隣パン屋の浅賀は

やたらおせっかいを焼く。

細川の上司にあたる男と

不倫関係にもなった。

同じく慎ましやかであるが

保育園での仕事を評価され

結婚も近い

典子とは対照的でもある。

しかし二人には共通の秘密がある。

20年前彼女らが小学生の頃。

一体何があったのか?

これが焦点になる。

やがて第2の殺人が起こる。

調べは朱里にも及ぶ。

ゆきこの消息も途切れた。

読後感

20年前の秘密は

朱里と典子にとって

忘れることの出来ない

辛く悲しい出来事だった。

彼女たちはある事件の被害者だ。

被害者とは無条件で

守られるべきはずだが

実際はそうではない。

2度、3度、

4度と苦しめられ続ける。

何故か?

この世の中では

加害者も被害者も同じ。

建前上は可哀そう、

理不尽と同情するが

本音は好奇の目で

見るものが一般的だ。

そのため、住まいを変え

名を変え、学校や仕事を変えて

生きていかねばならない。

どこへ行ってもこのネット社会

悪意のあるものが一人いたら

それで終わりである。

そうやって何度も傷つけられる。

後味が悪く納得できない。

どうにも不快さが拭えない。

おそらくそんな気持ちに

なるに違いない。

読者の感想

最初は話が重いかなと思って読みだすが過去と現在、ストーリーは二転三転あるものの読み終わると全ての事がスッキリ回収されてて、うまくできてるなという感想。 登場人物が嫌な奴だらけという感想が多かったけど、絶妙で緻密な裏設定もあり全ての人物がうまく動いて丁寧に1つのストーリーを動かしている感じ。 久々によくできたミステリー小説でした。

過去の監禁事件の被害女性二人の曰くありげな会話が冒頭から続き、一人が有名人のスキャンダルに巻き込まれ後に誰かに殺される。もう一方の朱里に疑いが向くが、そこから過去からの逆怨みの線が浮かんでくる。嫉妬や逆怨みで殺人を犯す心理を読者に植えつけ、スキャンダル報道の絡みで女の執念深さをも肯定させミスリードの幅を広げていく。最有力容疑者が見えてからの急展開が面白い。ポッと出な感じもするが痛々しい程絡んできた存在自体に伏線があり納得。一見、単純な構図から過去が二転三転する。記号の入れ替わりマジックも〇。

初読み作家さん。何故か話が頭に入ってこず集中できず時間がかかってしまった。朱里の過去には同情するし職場の人たちや失礼な刑事さんにも腹が立つけど、仕事はちゃんとやらなきゃだめだ。犯人は予想外だったけど、動機がちょっと自己中すぎかな。

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