重松清 卒業 ネタバレなし!少し変わった妹。決して叱らなかった母。

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重松清 卒業

本編あらすじ

登場人物

「まゆみのマーチ」

大野幸司・・・40歳会社員

大野まゆみ・・・幸司の妹

「あおげば尊し」

峰岸光一・・・40歳小学校教師

田上康弘・・・光一の教え子

「卒業」

渡辺・・・40歳会社員

野口亜弥・・・亡き親友の娘

「追伸」

敬一・・・無名作家

ハルさん・・・敬一の義母

母が死ぬ。

幸司は知らせを聞いて

空路、母の待つ病院に向かった。

そこには正に死を間近に控えた

母の姿があった。

病室から出ると見覚えのある顔。

妹のまゆみだった。

思い出話に浸る中

まゆみと母とのある思い出を

回想する。

まゆみは少し他の子とは

違っていた。

幼少から歌が大好きで

何をするにも鼻歌交じりになる。

幼稚園までは良かった。

しかしそれは

小学生になっても続いた。

当然授業中も。

保護者から苦情も出て

担任の先生からも

家で注意して欲しいと言われた。

しかし母は

まゆみの歌を決して

叱りはしなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

光一の父も教師であった。

今自分も小学校の教師になった。

父は厳格な教師だった。

教え子から年賀状の一枚も

届いたことはない。

子供に今、分からなくとも

後になって伝わればよい。

そのような考えで

常に厳しく接した。

そんな父が末期ガンで

在宅看護を受けている。

余命幾ばくもない。

そんな時教え子に

死に対して異常な

執着を持つものがいた。

田上康弘だ。

光一は康弘に

死を間近に控えた

父の姿を見せることを決めた。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

渡辺の元を少女が訪ねてきた。

野口亜弥。

亡き親友伊藤真の娘だと言う。

亜弥は渡辺に

父はどのような人間で

あったかを尋ねた。

なぜ無責任に死を選んだのか?

伊藤は自死だった。

亜弥の母がまだ

亜弥を身籠っている時であった。

その後別の男性と再婚し

野口姓に変わった。

そして今実の父の

死の真相を知り

当時の親友である

渡部を訪ねて来たのだ。

そして亜弥が死について

興味を抱いたのは

自らのいじめ問題も関係していた。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

敬一の母は病弱で

幼少の頃にこの世を去った。

母の死から時が経ち

父から一冊のノートを渡される。

そこには病床で

自らの病に絶望する様子と

敬一に対する思慕の情が

切々と書かれていた。

そしてその後

父はある女性と再婚する。

それが晴子さん。

ハルさんだった。

彼女はぶっきらぼうで

思春期の敬一には

気に障ることばかりだった。

ハルさんとの長い長い

軋轢の日々が始まった。

本編見どころ

本作品は4つの物語で

構成されている。

主人公はみんな40歳。

人生の折り返しを迎え

様々な問題にぶつかる年齢である。

そこで最初に訪れる死の現実。

死がもたらすもの。

死によって気付かされること。

それらを主人公の思いと共に

我々に訴えかけてくる。

しかしそれは優しい。

優しい問いかけを

心のまま感じて欲しい。

死が私たちにもたらすものは?

そこが焦点となります。

読後感

死をテーマにした題材は

世にたくさんある。

しかしこれ程優しいものは

あまりないかもしれない。

この作品に関する

率直な感想である。

人の感情や人物像は

見る側面によって大きく異なる。

なんてひどい人だと思っても

別の側面から見ると

それは優しさだったりする。

逆も然り。

死という不幸に対して

あらゆる側面で見ることによって

その死を暖かい意味のあるものに

変えてくれる。

作者の優しさが

滲み出てくる作品でした。

自らが死を迎える時

何を思うか正直分かりません。

ただ残るものに

優しさを残したい。

ふっとそんな気がしました。

作者紹介

重松清

1963年 岡山生まれ

出版社勤務を経て

執筆活動に入る。

1991年「ビフォア・ラン」

でデビュー。

1999年「ナイフ」

で坪田譲治文学賞

「エイジ」で山本周五郎賞

を受賞。

2001年「ビタミンF」で

直木賞 受賞

2010年「十字架」で

吉川英治文学賞 受賞

「代表作」

「流星ワゴン」「とんび」

「カシオペアの丘で」

読者の感想

情けない自分のままでいることを、まるっと肯定してくれる人がいる。それは祝福のような幸福だと、目に涙がたまってどうしようもありませんでした。4編で描かれている親子は、それぞれが血の繋がりや、生と死の狭間で揺れている。そんな彼らの必死の物語が心に流れ込んできて、あの時、母が歌ってくれた歌を、父がかけてくれた声を、姿を、そっと思い起こします。「卒業」は忘れることではなくて、寂しさも辛さも抱えたまま、大切な誰かと一緒に同じ歩幅で歩いていくてことなのかもしれません。私もいつか、誰かにとってのそんな人になれたらなあ。

結局は誰しもこう言ってもらいたいのだと思う。辛くて何もかも無理って思った時、まるごと認めてこう言ってもらえたらどんなに救われるだろう。『まゆみのマーチ』母親が歌ったその歌。その優しさ。子どもに愛を注ぎ続ける「母」という存在。その有り難さ。後から気づく子の哀しみと後悔と苦さ。ほんとうに、参ったなあって泣いてしまった。『追伸』の義母ハルさんも「敬一くんのマーチ」を歌えるような人だったらもっと上手くいったのかな。身近な人の死、ゆるしゆるされることを描いた四編。どれも痛みと優しさがあり、未来への明るさがある。

【懐かしむことができるのは幸せなんだ。「卒業」ならそれができる】10代の、ちょっと屈折した事情を抱えた子どもたちが、別れや区切りの節目を通して再スタートの一歩を踏みだそうとする短編集。心に背負ったものをそっと降ろす時を「卒業」と呼ぶのは、なんだか暖かく循環していくような優しさがあっていい響きだな、と思う。そして卒業の瞬間にはそれを見守る家族の支えがどうにも大切なんだと。それにしてもハルさんには泣かされました。ただ、筋書きの視点を娘に変えると、野口さんもなかなか泣かせてくれるお父さんじゃないかな。

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